第4話
それから三日後のデートにて。
約束通りの時刻に来た彼に対して、開口一番、私は大事な質問をぶつけた。
「ねえ、お互いの両親への挨拶はいつにする?」
「何のこと……?」
彼は眉間にしわを寄せる。本当にわかっていないらしい。
確かに、待ち合わせ場所の立ち話に相応しい話題ではないだろう。見当がつかないのも無理はない。
でも私としては、もう結婚のことで頭がいっぱい。彼と一緒に過ごせる時間は全て、細部を煮詰めることに使いたい、という気持ちだった。
「ほら、この
語気を荒げているのが自分でもわかり、途中から、少し和らげるように努力する。
すると彼はポンと手を叩き、
「ああ、あれか……。あれなら……」
何が面白いのか、ニヤリと笑った。
「なあ、今日は何月何日だ?」
何を言い出したのだろう。
そう思いながらも、素直に答える。
「四月四日だけど、それが何か?」
「そう、今日は四月四日。つまり三日前は四月一日、エイプリルフールだ! 嘘をついてもいい日だよ!」
小さい子供のような、無邪気な笑顔を浮かべる彼。
「だから冗談だよ、結婚なんて。まだ俺たちには早いだろ、そういうのは」
嘘? 冗談? あれが?
でもあの時、彼の目は泳いでいなかったのに……。
そう思ったところで、私は理解した。
いつも彼の目が泳ぐのは、嘘をつくからではない。嘘をつくことで、やましさを感じるからだ。
だからエイプリルフールのように、嘘をついても後ろめたく思わないのであれば、堂々としていられるのだろう。顔には出さずに、嘘をつけるのだろう。
「可愛い嘘ならば許容範囲だったけど……。これは違うわ! 結婚の話なのに!」
こんな嘘つきとは、やっていけない。
先ほどまでの結婚したい気持ちは消えて、むしろ逆方向に突き抜ける心境になっていた。
バチンと音を立てて、彼の頬を平手打ちする。
「……え?」
唖然とする彼を残して、くるりと反転した私は、その場から立ち去るのだった。
(「嘘つきな彼と見抜ける私」完)
嘘つきな彼と見抜ける私 烏川 ハル @haru_karasugawa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます