第3話 初めて(?)の嫉妬心
「おお、
俺を呼んだのは中学からの後輩だ。
「先輩、少しお時間よろしいでしょうか」
「いいけど……優菜は先に帰っとく?」
「……一緒じゃないと帰りたくない」
手にギュッと力が籠る。
……うん、可愛いな。
「そのイチャつきぶりだと、先輩たちは付き合ってるんですね」
「ああ、そうだ。それで要件はここじゃないとマズいか?」
「いえ、ここでいいですよ。振られることが分かっている告白なので」
「え……」
「こく、はく……」
告白というワードを先に言ったのは優菜。
驚く俺たちを他所に、坂比奈はふう、とため息をつき。
「幼馴染さんに勝ちたかったですが、やっぱり敵わなかったです。ですが、この想いはどうしても伝えたくて」
一歩前に出て坂比奈は言葉を続ける。
「涼夜先輩。中学の頃、ナンパから助けてくれたあの日からずっと好きでした」
告白……告白だ。
仲の良かった、慕ってくれた後輩が俺のことが好きだった、と。
全然、好意に気づかなかった。
確かにスキンシップとか激しかった気はしたが……。
逆に言えば、それだけ俺が幼馴染のことしか見ていなかったことになる。
「告白しましたので私は帰りますね。これからも後輩として仲良くしてくれると嬉しいです。あっ、彼女さんに飽きたらいつでも私のところに来てもいいので♪」
そんな言葉を残し、坂比奈は足早と去っていった。
昼間のイチャつき具合から一変、帰り道はお互い無言だった。
彼女の前で告白されたから、そりゃ気まずいというか……。
けれど、恋人繋ぎはそのまま。
「……」
しかし……なんにも話題が湧いてこない。下手なことを言えば優菜を怒らせかねないし。
そんなことを考えていると優菜が口を開いた。
「……ねぇ、あの子のこと考えてるの?」
「え、いや、考えてないけど……」
「ほんと? あの子の告白、受けとけば良かったとか思ってない?」
「思ってない。つか、今日付き合ったのにその日のうちに他の女の子の告白受けるなんてどんなクズ野郎なんだよ」
二股とかしないし、ずっと一途だし。
「……良かった。けど、あの女の子とこれからも仲良くするのは……ちょっと嫌だなと思った。……ごめん、ちょっと私、今の感情が分からない」
その言葉とともに繋いでいた手が離れる。
「先、帰るね」と小声で言われ、優菜は走っていってしまった。
俺は頭を押さえる。
「あー、やってしまった……」
さっきの出来事を優菜に置き換えよう。
優菜が他の男から告白されたら嫌だし、ましてやこれからも仲良くしましょうね、と言われたら俺だって嫉妬してしまう。
何故なら自分の恋人に『好き』という感情を抱いた人は、要注意人物として認識しまうから。
「はぁ、優菜ごめん……」
さっき、俺が「彼女優先」とか一言言ってやれば良かったかもなぁ。
◆◇
(優菜side)
素直になったから全てが上手くいくわけではない。
そんなの最初から分かっていた。
帰宅して真っ先にベッドに横たわる。
「あー、もう! せっかくいい感じだったのに!」
枕に顔をうずくめ、自分自身に怒りをぶつける。
けれど、あの時はどんな顔をしていいか分からなかった。それくらい嫉妬してた。
涼夜がモテてているのは以前から知っていた。
私みたいなツンツンで可愛げがない女の子にあんなに優しくできる。
面倒見がいいし、それに見た目だってカッコいいし……。
胸がモヤモヤする。
私が素直になれなかったのだって、涼夜がモテているのを知って、取られたくなくて、嫉妬して、焦って、あんな高飛車に……。
やはり、一日で変わるのは難しい。
「うぅ……自分で考えて今までダメだったんだからこれ以上悩んでも仕方ない。……よし、あの人に相談しよう」
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