第7話 私、ヤンデレだから一日監禁するね(3)

「はぁぁ〜」


 時刻は夜9時。

 風呂上がりの俺は部屋でのんびりしていた。


 監禁は1日ということで、明日の朝に帰れるとか。


 これは監禁じゃなくてお泊まりですね。手錠も当たり前のように付けてないし。


 と、優菜が部屋に戻ってきた。


「おかえり」


「うん……って、あ。髪乾かさないで寝ようとしてるでしょー」


「俺は自然乾燥でいいの」


「そう言うと思った。ほら、髪乾かしてあげるからこっちの椅子に座りなさい。逃げるなら拘束するから」


「へいへい」


 監禁中は優菜の言う事を聞かないと行けないので、素直に椅子に座る。


 ブォォォォォ


「もう、癖っ毛ができてるじゃない。髪を短くすればなくなるからって油断しすぎ」


「優菜は今の俺の髪型、どう?」


「えー、うーん……端の方が長くなってきたし、切りどきかも」


「なるほど。切った方がカッコいいということですね」


「髪を切ってもドライヤーはかける習慣をつけなさいよ」


「はーい」


 そんな会話をしているうちにドライヤーが終わる。


 そして部屋に一つしかないベットに2人して入る。

 今日は一緒に寝るらしい。


「枕、私の分しかないわ。涼夜は枕ないと寝れない派?」


「いや、別にどっちでもいいけど……」


 優菜が使っていいよ、と言いかけた時、閃いた。


 俺は先に寝転んで腕を伸ばす。


「彼氏の腕枕はいかがですか?」


「……ばかっ」


 と、口では言いつつ、優菜は俺が伸ばした腕に頭を乗せた。


 顔を少しでも動かせばくっつくほどの近距離。


「……もっとくっついていい?」


「どうぞ」


 ズイッと移動し、距離はゼロに。


 ドライヤーで乾かしたばかりのゆるふわな長い髪が俺の肌をくすぐる。

 いい匂いがさらに近づき、柔らかい胸が身体全体に当たって俺の心臓と股間にトドメを刺しにくる。


 ……監禁よりも性欲の方が心配になってきた。


 贔屓目抜きにしても優菜の顔立ちは非常に整っており、近くで見るとその美しさを再認識させられる。


 あと胸がでかい。ここ重要。


「何見てんの……」


「可愛い彼女の顔だけど?」

 

 そう言うと、優菜は真っ赤になって顔を逸らした。そんなところが愛おしい。


 ふっふっ。俺の方がまだ一枚上手だな。


 すると優菜は恥ずかしげに目を上げた思えば、


「ばーかっ」


 ちゅ


「っ!?」


 唇に優菜の柔らかい唇の感触が。

 一瞬、触れただけの軽いキス。

 こんなにソフトなキスなのに俺の心臓を握り潰す破壊力。


「仕返しなんだから。大好きだよ、涼夜っ」


 そしてニヤリと微笑んだ。


 これからも俺は何度でも優菜の魅力に仕留められるのだろう。


 すると、優菜の柔らかな手が顔に触れてから少しずつ下がっていく。


「涼夜の顔も胸板も逞しい腹筋も……多分その先もすごく熱い……」


「っ~~~……優菜っ」

 

 ノックアウト寸前なのに優菜はまだ可愛すぎる責めをやめない。

 てか、色っぽい。

 優菜の前では俺の理性など雑魚にも程がある。


 このままじゃ我慢できなそう。

 ……今こそ拘束具の出番ではないか?


「……ごめんなさい。許してください」


「ふふっ。私だってたまにはやるんだから」


 仕返し成功とばかりに優菜は微笑み、俺の股間を気遣ってなのか、少し離れてくれた。


 気を紛らわすために話題を出さなければ。


「今日1日監禁してどうだった?」


「そうねぇ、たまにはいいかなと思った」


「そっか。これからもたくさん2人で色んなことやろうな。まずはデート。そして夏には海や花火大会に行って、冬は温泉旅行」


「そうだね。あと誕生日や記念日にはお互いプレゼントを送りあったりして……」


「子供も欲しいですなぁ……」


「ばかっ、それは気が早い……」


「そうか? そこまで行くのは意外とあっという間だと思うが……」


「こ、高校生のうちはそういう行為はダメなんだからっ。せめて卒業してから……」


「わかってるよ。おじさんにもめっちゃ言われてるし。ただ卒業して俺が仕事を始めだしたら覚悟はしとけよ」


「っ、わ、分かったわよ……」

  

 照れる優菜の頭を撫でる。


 優菜には専業主婦になって欲しいから、いい就職先につかないとな。


「ねぇ、涼夜」


「ん?」


「これからもずっと隣にいてね」


「当たり前だ。言っただろ、絶対離さないって」


 そう言って、グイッと優菜の身体を引き寄せ抱きしめる。


 これからも俺たちは時には喧嘩、けれどずっと甘くて幸せな生活を送るのだろう。


 そんな未来を思い浮かべ、そっと瞼を閉じた。



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