異質と普遍のコントラスト

※「近衛基通三部作」(「燠火の舟」「花ぞ降りしきる」「水草のごとく」)に対する総合的なレビューです。

 小説の舞台は、現代を生きる我々とは、大きく文化・慣習・価値観の異なる、八百年前の話である。
 まず、現代の我々の生活と比べた場合の異質さが、短い文章の中で、きわめて端的に表されている。言い換えれば、読者を八百年前の"異世界"へ要領よく誘っている。
 そして、その現代とは異質な世界で、どの時代の人間でも持っている普遍的なものを描き、その普遍性を色鮮やかに引き立たせることに成功している。