その一歩が遠くて。でも誰よりも近い?

内気な主人公、綾瀬文栞が人気者の長瀬くんと接点を持つ、小さな物語。
この物語は劇的な恋じゃない。
日常にあふれた。
あるいは日常に埋没した、恋心未満の感情。
住む世界が違う(と文栞ちゃんは思っている)長瀬君が
接点ができることで、少しずつ気になる存在になっていって――。


異性というだけで住む世界は違うと思ってしまうけれど。
自分のネガティブな面をどうしても意識してしまうけれど。

でもね思春期特有の後ろ向きさを飛び越えて言葉をかけてくれる長瀬君。そりゃ人気者ですよ。

だから、住む世界が違う。文栞ちゃんがそう思ってしまうのも分かる。
だから、知らない世界に触れることに誰もが躊躇してしまう。

でも同じ世界で、同じ時間を共有している。ココは平等ですよね。
例えば、気になる人がどんな本を読むのか。
どんな風に自分のことを思っているのか。思い悩むのは、きっと誰もが一緒で。

接点が芽生えたら
どうして長瀬君との時間を「楽しい」って思ってしまうのか。
やっぱり文栞ちゃんは思い悩んでしまう。
そんな彼女の背中を押してくれる親友の存在も暖かい。

これは、隣で悩んだり笑ったり一緒に考えたりしながら
当たり前の日常に全力で向き合う、そんな青春の一幕。

文栞ちゃんは気付いていないけど。
その一歩が遠くて。でも誰よりも近いんです。

つい頑張れと応援したくなる作品です。

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