要素だけを抜き出すと割とありがちなヒューマンドラマものでご都合主義ともとれるが、筆者の筆力がそれを受け入れられる世界を読み手に提供してくれている。
一方的な押しつけではなく悪意の存在も描写され、しかし過剰に善も悪も装飾されずいい意味で「リアル」な感情の動きが情緒をえぐってきて二章読了時辺りで読み手の情緒がバグる。
時系列が少し入り組んではいるが恐らく作者の意図した演出なのでとりあえず読み進めればちゃんと繋がるので安心して欲しい。
日頃の人間関係に疲れた方、パワーゴリラ転生物(これはこれで良いものだが)、ちょっと重いものを読みすぎた時に読むと風邪ひいた時の素うどんのようにつるっと読める良い作品。
ゲームの楽しみとはなんだろうか。
ボードゲーム、レースゲーム、カードゲーム、シューティングゲーム、シミュレーションゲーム、ロールプレイングゲーム。
種類は数あれど相手に勝つもしくは謎を解くというのが殆どのゲームで採用されているテーマだ。その過程で自分が強くなっていくところに楽しみを覚えるシステムもある。
本作の主人公コヒナちゃんはそのテーマを真っ向から否定し──いや否定はしていない無視だ──相手に勝つことも謎を解くこともせず、他キャラとの掛け合いを楽しみにしている
なぜなら彼女はNPCでありたいから。
NPCとは本来プレイヤーがそうしないキャラなので、論理的にはプレイヤーが存在するコヒナちゃんは矛盾するのだが、それでもNPCでいたいのだ。
彼女では魔王やドラゴンを倒すことが目的ではなく、街で占いをすることこそが彼女の楽しみなのだ。
ひょんなことから知り合うキャラ達の占いをしその結果から、結果的に助言となるアドバイスをすることで、他キャラを操作する実世界のプレイヤーは救われる、という程大袈裟ではないがほんの少しだけ背中を押されてまた歩みを始めている。
壮大なストーリーはないし強敵との戦闘のときもなんか気が抜ける戦いだったり、登場するキャラもちょっと変な人達だったり、でもすごく魅力的な人達だったり、読んでいるこっちもちょっとだけ歩きたくなるそんな素敵な作品です。
物語の主な舞台は、エターナルリリックというオンラインゲーム。
主人公コヒナは、モンスターとは戦わず、占い師としてお店を出しています。
そこへ訪れるのは、実生活やゲーム上で悩みを抱えるプレイヤーたち。
コヒナは占いによって、彼らを導き、確かな絆を紡いでいきます。
このコヒナさんが、おっとりしていてどこかコミカルで、とても愛らしいキャラクターなのです!
コヒナさんが提供するのはあくまでも占いですから、それぞれの問題を解決するのはお客さん自身。
けれどコヒナさんの人柄と、確かな占いの腕前によって、皆自らの道を見い出し、歩んでいきます。
私は占いに明るくありませんが、作者様の解説が素晴らしくて、タロットに興味を持ちました。
心温まるストーリーと、タロットの深い世界がここにあります。
すごく面白い、おすすめの作品です!
琴羽様の作品「世界渡りの占い師は、NPCなので世界を救わない」を読ませていただきました。
テーマはタイトルの通り「占い」です。
物語の主人公は「占い師」のコヒナちゃん(種族:エルフ)。様々なゲームで占い師として活動する彼女のプレイスタイルは、徹底した「占い師」としてのロールプレイ。いわゆる「縛りプレイ」です。
占いって、本質的に不安定で、とても不確かなものですよね。コヒナちゃんは、そんな占いの結果をもとに、誰かの背を押すのでもなく、引くのでもなく、ただそっと手を添えてくれます。
そしてそれが、物語に登場するプレイヤー達にとって、何より強く心に響きます。
一話読み終える度、不思議な暖かさが心に広がります。
この占い(レビュー)を信じるかどうかはあなた次第。だけど、読めば少し優しい気持ちになれるかもしれませんよ?
是非、結果はご自身の目でお確かめ下さい。