夏の日の扉

作者 司之々

本作で語られる技術は、死にゆく我々が求める福音となる。

  • ★★★ Excellent!!!

 死の瞬間、あなたは何を求めると思いますか。

 色々な感情が去来するとは思いますが「あの時こうしておけば良かったな」と自らの行動を振り返ることも多いのではないでしょうか。

 人生の中には、時として大きな岐路が訪れます。
 どの道を選んでも必ず同じ場所に辿り着くという、運命論的な考え方もありますが、多くの人は、まったく違う道、IFの人生を歩いていたらどうだっただろう、と夢想することと思います。

 もし、その岐路で行動を選び直すことが出来たなら。

 こんな着想から、時間遡行などで「現実」をやり直す多くの物語が存在します。

 ただ、そこで変化した世界が、自分にとって必ずしも良いかどうかはともかく、自分の都合だけで世界を改変してしまう事実は残ってしまいます。

 私は、自分の都合で世界を改変する勇気はありません。

 そんな大げさなと思われるかも知れませんが、ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす可能性は否定できないのです。

 まあバタフライエフェクトの話は置いといて。

 そこで、本作の技術です!
 作者様は「黒歴史自己改変装置」と名付けておられますが、これは最後の最後、後顧の憂いを無くし安らかに旅立てる安息の睡眠導入剤。

「それってただの自己満足なんじゃ……?」

 という意見はごもっとも。
 でも、それでいいんです。
 この世の中は全部自分の頭の中に存在しているのですからね。
 死んだ後、世の中への干渉力を無くした後の事まで責任は取れないのです。

 さて、この技術は偉い科学者さんたちがきっと体現してくれるでしょう。
 我々はその日を迎えるために、たくさん生きて、たくさん知識を得ておきましょう。
 培った情報を再構成して、加速された数秒の中で、何回も別な人生を歩めるかもしれませんからね。

 世の中を儚み、絶望している暇はないのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

その他のおすすめレビュー

K-enterpriseさんの他のおすすめレビュー 254