園児の霊が、慕っていた幼稚園教諭に害を為す!? 戦慄のヒューマンホラー

幽霊というものは「女や子ども」が多いらしい、というのも「守るべきはずもの」が守られずに、悪意ある存在として立ち現れるから、より一層恐ろしいのだとか。本作は、ある園児がネグレクトによって死亡した所から、生前その子が慕っていた幼稚園教諭の周りで怪異が起こり始めます。

もうこの設定からして秀逸ですね。短い人生を終えた無垢で無邪気な魂が、無邪気なままに恐ろしい害を為していくのです。はたしてそれは、本当に園児の仕業なのか? だとしても悪霊として祓っていいのか? そうしたサスペンス要素の中から、徐々に主人公自身が抱える「やましさ」も明らかになっていきます。

また、本作のクオリティを高めているのが「ミッション系幼稚園」という職場の解像度の高さ! イエズス会など実際の教会組織ではなく、プロテスタントの流れくむ新宗教ですよーとしたのは現実への配慮でしょうか。ともあれ、著者は実際に保育士や幼稚園教諭の経験がおありなのかな? と思わせられるほど、その描写は自然で堂に入っていました。そこが作品世界のリアリティを否が応にも加速させます。

その上でさらに、「信仰」の話にまで踏み込んでこられたのは、諸手を挙げて喝采しました。私も両親が牧師夫妻で、プロテスタント系の幼稚園に通っていたり、洗礼を受けたりしたクリスチャンの端くれなので、「神のいない心」を知らない、という話のくだりはうんうんと頷いてしまいました。

クライマックス、彼女の「あの選択」ですべてが解決したかと思いきや、最後の最後にとんでもない落ちが出てきて戦慄です。今度は、きっと幸せに生きてくれますよね……。
最後までクオリティの高い作品を、ありがとうございました!