襲い掛かる黒い靄の中に潜む悪意 

立花藍は、幼い頃から人の背中から立ち上る黒い靄のようなモノが見えてしまう体質だった。
 それは、幼少期、隣の友達の母親だったり。また、小学生の時の公園で出会った浮浪者だったり。同じクラスの男子だったり。友達の父親だったり。
 そして、高校生になって隣近所の三上からも背中から黒い靄が見えてしまう。

 ――「黒い靄」作者はそれを「生霊」と定義付けてしまう――

「生霊」とは、そもそも他人の怨念(恨み、辛み、妬み、僻み、嫉み)が人に飛ばされ取り憑く・と普通は解釈しているが今回の話はそうでは無い。  

 この話では、その人の背中から出ている黒い靄はその人の悪想念「生霊」(恨み、辛み、妬み、僻み、嫉み)なのだ。だから、本人と同様な表情を背中の奥で見せるのは、自分自身が人を嫉む悪想念「生霊」を自ら纏ってしまった現象なんだろう。

 なぜ藍にだけ生霊が見えるのか?どうして生霊がとり憑くのか?なぜ生霊にとり憑かれたら、その人は亡くなってしまうのか?
 多くの謎を残しながら物語は、不安と恐怖を連れて進んでいく……

 日常に潜む変質者とは、この様に生霊がとり憑いているのかも知れない。
 アナタの後ろに何かが憑いていないか、時々振り返ってみてはどうでしょうか?

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