第7話 先輩とお出かけ①
「なぁ坂下」
「なんだ?」
「お前。先輩に告ったのか?」
「え、ななんで」
とある平日の会議終わり。
昼休み前の一服(決してサボりでは無い)として、自販機の前で渋沢とコーヒーを飲みながら雑談をしていると渋沢が唐突に聞いてきた。
コーヒー吹いたじゃないかよ。
「いや、最近ふつ~に2人で昼食べに行くし、飯だって先輩の手作り弁当だろ?」
「ま まぁそうだけど・・・」
「普通に考えて、ただの部下に手作り弁当なんて作ってこないだろ。俺は先輩に弁当とか作ってもらったこと無いぜ。それに」
「それに?」
「先輩もさ、坂下と居るときは素に戻っているというか、俺の知ってる昔の牧村先輩な感じなんだよな」
確かにあれから先輩は、毎日僕にお弁当を作ってきてくれるようになったわけだけど、まぁ普通に考えてただの部下にお弁当を作ってきてくれないよな。
最初は僕が先輩の手料理を食べたいってリクエストしたからだったけど、2回目以降は"部下の健康管理も上司の仕事"とか言って作ってきてくれるようになったんだよな。
それに勘違いとかじゃなく最初の頃と比べて僕との会話も棘がなくなってきたというか、自然な感じになってきたし時々笑いかけてくれるようにもなった。
多分・・・先輩も僕に好意を持ってくれているとは思う。
もちろん嬉しいことだし僕も先輩のことは好きだし思いを伝えたいとは思うけど・・僕の勘違いで先輩に嫌な思いさせちゃったらとか、過去の経験から臆病になってしまっていたのかもしれない。
渋沢の言葉を受け、考え込んでいると休憩スペース近くの会議室の扉が開き、休憩スペースの方に先輩が歩いてきた。
先輩が参加していた会議も終わったみたいだ。
そして、にこやかに
「坂下君。お昼行きましょ♪」
「はい!」
色々と考え込んでたのに、反射的に返事しているし僕。
あ、渋沢笑うなよ!
「坂下。さっきの件だけど、もしまだならちゃんとした方がいいぜ」
「・・・だよな」
渋沢が先輩に聞こえないように耳打ちしてきた。
・・・そうだよな。
僕からきちんと気持ちを伝えないとな。
「じゃ、そういうことで。牧村先輩!坂下のことよろしくお願いしまっす!」
「ちょ 渋沢!」
ニヤニヤしながら大声で先輩に声をかけると渋沢は何事もなかったようにその場を去っていった。
そんな渋沢を目で追っていると
「あ、あ~ぁ、、、もしかして今から渋沢君とお昼に行くところだった?
そ そうだよな。最近いつも私とばっかりだし、前は渋沢君と行ってたもんな・・・」
僕が立ち去る渋沢を見ていのに気がついた水奈先輩が、少し申し訳無さそうな顔をして話し掛けてきた。
やば。ちょっと上目遣いで申し訳無さそうにしている先輩。
めちゃくちゃ可愛い。
「だ 大丈夫です!」
「そうか?無理しなくても・・・」
「本当大丈夫です!お昼行きましょ!良いんです。あいつとは飲みに行ったりもしてますし、昼は先輩と一緒が良いです!」
「そ そうか?それなら良いんだけど・・・。あ、今日はまた唐揚げ作ってきたんだ♪」
「ありがとうございます!楽しみです」
何だか先輩も嬉しそうにしてくれた。
そうだよな。やっぱり気持ちは伝えないとな。
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<渋沢 成海視点>
「渋沢」
「なんすか?亮太先輩」
坂下と別れ事務所に戻ると(槇村)亮太先輩が話し掛けてきた。
最近一緒に仕事をすることが多い気のいい先輩だ。
「坂下って牧村さんと付き合ってるのか?」
「あ、気になります?」
「まぁな。最近いつも一緒に昼行ってるだろ?
それに牧村さんって誰に対しても厳しい感じだったし、人付き合いもあまり上手い方じゃなかったけど、最近少し丸くなったというか雰囲気良くなったしな。
あれって坂下の影響だろ?」
確かにそうだよな。
姉貴が言うには人見知りで男性が苦手とか言ってたから無理して虚勢張ってるところもあったんだろうけど。
「だと思いますよ。坂下も厳しく指導されながらも牧村先輩のこと尊敬しているとか言ってましたし」
「そっか。傍から見てると坂下って年中叱られてるし"大変だよな"とか言われてたりもするけど"愛のムチ"って感じで前向きなんだな」
「ドMなのもしれませんよ♪」
「はは、そうかもな。って酷いなお前♪
でもまぁ牧村先輩って職場では一人で居ることが多かったから指導を受けた後輩としてはちょっと心配だったんだよな」
「確かに牧村先輩って仕事以外の付き合いってあんまりなさそうですね」
「だな。指導受けてる頃に何度か飲みに連れてってもらったりしたけど話しだすと結構喋るしいい人なんだけどな・・・」
「え?もしかして亮太先輩って牧村先輩のこと?」
「いやいや違うぞ勘違いするな。俺には愛する妻と子がいるからな♪」
そういえばそうだった。
先輩って愛妻家で有名だもんな。
一昨年高校の頃の同級生と結婚して去年お子さんも生まれたとか言ってたもんな。
散々写真見せられたし。。。
「で、どうなんだ?付き合ってるのか?」
「坂下と牧村先輩ですか・・・」
う~ん。微妙だよなぁ今の2人。
2人とも恋愛経験少なそうだし、何だか今の関係で満足してるっぽいところもあるんだよなぁ。
「好き合ってるとは思うんですけどね。俺からしたら何とも煮えきらないというか・・・」
「あぁ。。。そっち系か。
確かに2人とも真面目そうだし恋愛関係は苦手そうだもんな」
「ですね」
「・・・よし!俺も先輩には世話になったしちょっとお節介してみるかな。
渋沢。もちろん手伝ってくれるよな?」
「もちろんですよ先輩♪」
亮太先輩何するつもりなんだろ。
何だか面白そう♪
ツンな上司と甘やかしたい僕 ひろきち @hiro_1974
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