第6話 先輩のお弁当
更新がだいぶ遅れすみません。一応完結までは書きますので引き続きよろしくお願いします(週1位で更新予定です)
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「う~ん。。。。」
「どうした坂下。難しい顔して」
「あ、いや、ちょっと考え事。大丈夫だよ」
「そうか?ならいいけど
あ、午後の会議よろしくな。俺今から外回りで出られないから」
「了解」
渋沢の家で水奈先輩と約束をしてから1週間が過ぎた。
色んな意味で何事もなく平和な日々が続いている。
僕としてはいつ水奈先輩の手料理を食べられるのか?
もしかして水奈先輩の家に招待してもらえうるのか?
いやいやそれともお弁当を作ってきてくれるのか?
とか思いながら過ごしているのにむしろ、最近は水奈先輩に避けられているような気もする。
まぁお互い忙しくて一緒にいる時間が少ないってこともあるけど・・・もしかして嫌われた?
何だかあのときは水奈先輩も売り言葉に買い言葉的な感じもあったし、僕も何だか私服の水奈先輩を見てテンション上がってたというか。
後になって冷静になったら僕のこと嫌になったとか・・・。
・・・考えても仕方ないか。
あ、そろそろ昼だけど今日は渋沢は居ないんだったよな。
仕方ない。今日は一人寂しく駅前の定食屋にでも行くかな。
とランチメニューのことを考えながら席を立ち外に向かおうとしたところ
「お、おい坂下」
「へ?先輩?」
「・・・」
会議で席を外してたはずの水奈先輩が何故か僕の前に立ちふさがった。
何だ?
というか、僕の呼びかけに返事をしてくれないし、それに何故か不満顔だ。
先輩から声かけてきたのになんで・・・・あっ!
「水奈先輩?」
「・・・よろしい。ちゃんと名前で呼ぶって言ったでしょ」
やった返事してくれた!
名前でって言っても普通に他の社員が居る前でこの呼び方は結構恥ずかしいんだよな。皆僕と先輩の事をチラ見してるし。
と、何だか先輩が挙動不審というか、ちょっと緊張した面持ちで僕の目の前に可愛らしい手提げ袋を差し出してきた。
「・・・こ これ」
「え?これ?」
「見ればわかるでしょ!お弁当作ってきたの!
味は保証しないけど今から一緒に食べるから屋上行くわよ!」
「は はい!!」
え?もしかして手作り弁当?
作ってきてくれたのか?
でも、味は保証しないって?え?
急な展開で何だか色々と混乱していたけど、僕は慌てて早足で先を歩く水奈先輩を追いかけた。
営業部のある社屋の屋上は緑化がされていてちょっとした公園の様になっており社員の憩いの場として開放されている。
テーブルが置かれている他に自販機や売店もあるので昼食をここで食べる人も結構いる。まだ昼休みが始まったばかりの時間だけど天気がいい為か人も多い。
と、水奈先輩は奥の方のテーブル席を確保し僕を手招きした。
テーブル席はほぼ満席で最後の1席に座れた形だ。
・・・当たり前だけど先輩と2人きりでお昼なんだよな。
2人で外出したり会議に出たことはあったけど、お昼を2人でってことは初めてだよな。今更ながらにそう思うと緊張する。
そんなことを考えながら席に座る水奈先輩を見ていると
「ほら!何してるの?早くこっち来て座って」
「は はい!」
水奈先輩に急かされた。
先輩はそういうの気にならないのかな?
それとも・・・
「そ それじゃ食べるわよ」
そう言いながら少し緊張した面持ちで僕が持っていた手提げを取り、中からお弁当箱を取り出した。
いつも先輩が使っている小さめのお弁当箱と一回り?いや二回り位大きなお弁当箱。あの大きいのが僕用なんだよな?かなりのボリュームだな。
期待しつつ先輩の行動を見守っていると先輩は大きなお弁当箱の蓋を開き僕の前に置いた。
「おお!!」
思わず歓声を上げてしまうほど美味しそうなお弁当。
期待していた唐揚げに卵焼き、サラダと煮物と全体的に和風な感じのお弁当だ。
やば。早く食べたい!!
「春香には敵わないかもしれないけど・・・」
「そ そんな事ないです!!凄く嬉しいです。頂きます!!」
恥ずかしそうにしている水奈先輩が何だか可愛い。
僕は早速唐揚げに箸を伸ばした。
「美味い!」
「ほ 本当?気を使わなくてもいいのよ?」
嬉しそうな、それでいて少し不安そうな顔で僕を見る水奈先輩。
そんな不安がらなくてもお世辞抜きで美味しいですよ。
「はい。凄く僕好みの味です!」
「そ そうか?
「あ、卵焼きも頂いていいですか?」
「うん。あ、卵焼きは自信作なの!」
僕が美味しいと言ったことで不安が解消されたのか満面の笑みで僕が食べている姿を見つめる水奈先輩。
何だか幸せだ。
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<牧村 水奈視点>
「春香!どうしよう私、坂下君に御飯作ってあげるとか言っちゃったよ~」
「いいんじゃないですか?勢いっていうのも大切ですよ。
それに何か困ることあるんですか?先輩だって料理上手じゃないですか。
まずは胃袋からつかむってのもありだと思いますよ」
「上手って言われても・・・レパートリー少ないし、自信持てるの唐揚げ位だし」
「ふふ。先輩って唐揚げ好きですもんね。大学のときとか毎日のようにお弁当に入れてましたよね。良いと思いますよ唐揚げ。それに男子は嫌いな人とか居ないんじゃないですか」
「そ そうかな・・・」
「そうですよ♪」
そんなやり取りを坂下君が帰った後に春香としたわけだけど、やっぱり色々と不安だったので、その日から仕事終わりに春香の家に寄って付け合わせの煮物や卵焼きの指導を受けることになった。
自分用なら妥協しまくりで作るけど人に食べて貰うんだと思うと妥協は出来ない。
まぁその結果、納得がいく調理が出来る様になるのに思ったより時間がかかってしまったんだけど・・・。
約束してからもうじき1週間。
"そろそろ食べさせてあげないと"と緊張しながらも早起きして作ったお弁当。
緊張しながらも坂下君を屋上に呼んで一緒にお弁当を食べた。
2人で昼食とか考えると恥ずかしくて素っ気ない態度になっちゃったかもしれないけど・・・坂下君喜んで食べてくれた!
それに私の作ったお弁当を”美味しい"って。
どうしよう。嬉しすぎる!
また明日も作っちゃう?
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