もしも電車に感情があったならば

 此方の作品にまず一言言わせて頂くと、とにかく『視点が凄まじい』この一言に限られると思う。

 『転生』とワードを聞いて、私は最初にどうしても異世界の何らかの生物に生まれ変わったり、人格や見た目そのままに他の世界へと移動する様子を想像してしまうが、それが実に想像力が足りていなかったことを痛感させられた。

 主人公が転生するのが電車で、しかも舞台が現代社会。
 いつも通勤等でお世話になっている電車から始まり、地方のローカル線、いずれは海外へと舞台を移動していく様子を一人称視点で主人公の感情を混ぜつつもシンプルに淡々と書かれており、とても読みやすく、それでいて状況やその時の想いが良く伝わってきた。

 そして最後には、どこか哀愁の漂うような、それでいて綺麗な終わり方で幕を閉じられており、たった2話とは思えないほどの満足感だった。

 総文字数3000文字に満たない、読了までにさほど時間が掛からない。それなのに後を引くもの寂しさと充実感を感じられたとても面白い作品だった。

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