実直な青年剣士が全力で駆け抜けた剣と恋の軌跡

『魁先生』とも呼ばれた若き剣士、藤堂平助を描いた一作。
ご存じ、新選組の物語ですが藤堂平助をメインに書いているのは珍しいのではないでしょうか。

本作の藤堂は実直で優しい青年剣士として描かれています。
その優しさ故か、人を斬る生活や隊内の権力争いに辟易し、苦悩する姿が鮮烈で印象的です。
恋する相手にも人斬りとしての自身に負い目を感じ、素直に接することができない。
強い剣士でありながら、一人の青年としての藤堂平助を見事に書いています。

藤堂平助以外のお馴染みの人物も魅力的に描かれており、人物の造詣が巧みです。
土方や沖田、永倉など、読者ごとに推しができると思います。

若き藤堂を主軸に二人の女性が登場しますが、その二人の間で揺れる藤堂の心が切ないです。
女性たちが藤堂を思う気持ちも丁寧かつ抒情的に表現され、読んでいると心打たれます。

幕末を駆けた藤堂平助の姿、ぜひご覧になって頂きたい一作です!

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