第7話 どんな形でも人は人を愛せるものだ。
「私…潤子ちゃんを好きでいても良いの?」
「うん。私は?葉呂ちゃんの事、好きでいていい?」
「……」
体中震わせて、頬を赤くして、葉呂は、潤子の手を思いっきり握りしめた。
その次の瞬間、和弘が思わぬ行動をとった。
潤子を抱きしめたのだ。
「!?」
「な!何すんのよ!」
そう言うと、潤子は和弘の腕の中から必死で振り切ろうとした。それでも、和弘はひるまず、葉呂も抱き締めた。。
「これ、普通じゃね?」
「え?」
「片桐が葉呂に抱き締めたくなったら、俺が片桐を抱き締めて、葉呂が片桐と手を握りたかったら、二人の手、俺が握るから」
「だってさ、こんな狭い場所で、俺らみたいのが、三人もいんだぜ?俺ら少し少ない
人間なんだよ。それは本当にきっと悪い事じゃない。下見て歩く必要ない。だろ?」
「稲木…」
「今こそ、中学生だから、俺たちみたいな少しは、はみ出した俺らだけど、高校生になって、社会人になって…もっと世界がどんどん俺らみたいなはみだしを認めてくれる未来がきっとくる」
そう、口調は淡々とだったけれど、和弘は泣いていた。
「ふふふ…和弘…一番泣き虫じゃん」
潤子がからかう。当たり前だ、と言った感じで、
「うっせーよ」
「和弘君、私、潤子ちゃんの手、握りたい…」
「ん」
そっと葉呂の手右の手を握り、もう一つ潤子の手を葉呂の手に重ねて…。
誰もいない、下校時刻の過ぎた体育館で三人して大の字になって、過去の話をした。
「私、お父さんに彼氏できたって言えるかも」
「俺、妄想彼氏にするの?ま、いいけど」
「じゃあ、私の時もそうして」
「なんか…心が軽い…もう恋をしてるだけで苦しかったけど、それを誰にも言えなかったのが一番苦しかった」
葉呂が言う。
「俺だっていつバイだって知られるか分からないから、何とも思ってない奴にわざと悪戯したりして視線避けてたり、本当に彼女が出来た時は、友達にわざわざ紹介したり…疲れたなぁ…」
「私、葉呂ちゃんが初恋の人なの。葉呂ちゃんの気持ち聴けた時には、嬉しかったなぁ…」
互いにレズや、バイと言うカテゴリーに生まれて苦しんだ分、三人の中でしか創造出来ない好きが築かれた。
「私、遠慮なく葉呂ちゃんのクラス遊びに行くからね!和弘、その時は一緒に話に来てね!」
「おぉ。任せろ」
「私、和弘の事も嫌いじゃなくなった」
「何?俺の事馬鹿にしてる?葉呂」
「ううん。今まで、こんなに真っ直ぐな人居なかったな…って思うから。最初からバイって言ってくれたし。それでなにか…なにか来たな…って来てくれたんだな…って思った…まぁ強引すぎたけど!」
「わりぃ…つい勢いで…」
三人は川の字になって、和弘の右の腕には葉呂の頭を乗せ、左の腕には潤子の頭を抱え、笑い涙が絶えず、
「私…これから青春が始まるんだな…って気がする」
「おぉポエム?」
「茶々入れないの!
「私、通じ合う時は通じ合う人がいると思う。私、たったレズだのバイだの、そんなのもうどうでもいい」
「強いね…葉呂ちゃん」
「えへ。ちょっと。でも、私は青春を、光を、輝きを、絶対あきらめない!」
「それ、ちげーし」
「え?」
「私じゃない。私たち、僕たちは、だろ?」
そうい終えると同時に、
「お、お前らまだいたのか!下校時間もうだいぶ過ぎてるぞ!すぐ帰れ!」
「は―――い」
和弘を中心にして、葉呂と潤子もそれと同じように、万歳をして体育館から逃げるように、最高の涙笑いで自分たちの、掲げた信念を、これから先、どんなことがあっても、この三人で、喧嘩したり、抱き合ったり、泣いたり、怒ったり、最後は笑えたこと―――。
その日の帰り道、三人は誓った。
葉呂が口にした、
私たち、僕たちは、青春を、光を、輝きを、諦めない
そのスローガンのもとに。
私たち、僕たちは、青春を、光を、輝きを、あきらめない。 涼 @m-amiya
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