第2話 輝(ひかり)

はらはらした。


今は小学六年生。一年前から、葉呂はまた女の子を好きになっていた。

自分がもはやではない事を、毎日押し込めて…。


その子の名前は、片桐潤子かたぎりじゅんこと言い、物静かで、いつもツインテールの髪型で、おくれ毛が可愛くて…。

でも、葉呂は、必死に気持ちをセーブしていた。

もう自分がレズであることを自分の中では確信していた。



「葉呂ちゃん、机並べて一緒にお昼食べない?」

「あ…ありがとう。潤子ちゃん。でもいいや。私一人の方が良いから…」

「そか…、じゃあ、また体育の時コンビになろうね」

「あ…私今日朝転んじゃって、足首痛めちゃって、見学なの」

「え、大丈夫!?」

「平気平気!あ…ちょっとトイレに行ってくるね」


潤子は葉呂の秘密をまったく感じとっていない。

潤子はだ。

前に、加わりたくはなかったが、体育が自習になって、女子がたむろして、誰は誰が好きで、あの子は両思いだよね、だとか…。

そんな話を、顔をほてらせ、潤子が言った事があった。

「私、河野君が好きなの…」

「あ、だろうと思った…」

「え?」

「え?…あ、なんかそうかな?ってちょっと思ってて…。当たりー!えへへ」



はらはらした。



なんで潤子の想い人が河野だと分かったのは、河野を目で追う潤子を、葉呂が潤子を目で追っていたから…。


苦しかった。毎日両親に気付かれないように部屋で涙をコロコロと床に転がした。

でも、でいなければならない。また父親の怒りを買う事になる。

なんでこんな思いをしなければならないのか…。唯、男と女で人間である事には変わりない。誰が誰を好きになったっていいはずだ。なんで性が同じだと言うと、こんなに怖がらなくてはならないのか…。


見たくない流星群が葉呂の心をまた締め付ける。

その流星群が清らかな光を葉呂は見ているしかない。この先、ずっとどんな流星群が真っ暗な夜空を輝かせたとしても、隣にはきっと誰もいない。ひかりが、涙で見られない。歪んで、ねじれて…。そして泣く。


二度と私の眠りにつく、その時を待っていたように、顔を映りださないで。


一番愛おしい人。

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