家族そろって

@mia

第1話

 オートバイ好きな叔父の影響で、幼いころから僕もオートバイに興味を持っていた。

 叔父は実家暮らしの独身者だったので、自分が使える給料のほとんどをオートバイに使っていた。

 何台もの自分のオートバイを前にして笑っている叔父さんに憧れた。歯ブラシで部品の清掃をしている姿でさえカッコよかった。

 たまに僕のうちに来て、「○○へ行ってきた」などと言ってお土産をくれることもあった。

 幼かった僕にとって、叔父は自由の象徴だった。成長してもそれは変わらなかった。

 自分のオートバイを手に入れてからは、どこへ行くのも楽しかった。どこへでも行ける、そう思っていた。

 街の渋滞している道も、田舎の自分以外の誰も走っていない道も、どこを走るのかは思いのままだった。運転中、孤独なことさえ楽しかった。

 春夏秋冬、自然を感じることができる。あまりにも直接的に感じられるので、電車にすればよかったと思ったこともある。が、結局オートバイに乗っていた。


 そんな僕がファミリーカーに乗るようになった。

 妻とまだ幼い二人の子たちとの移動に車は不可欠だ。ベビーカーで電車に乗るのは気を遣うし、子ども達がぐずっても自宅と目的地の往復が車なら何とかなる。おもちゃやお菓子、飲み物を持ち込んでいれば何とかなる。荷物が増えても車なら大丈夫。

 妻の希望で二、三か月に一度は遠出をした。動物園や水族館へ行ったし、桜や紅葉も見に行った。雪を見に行ったこともある。他にもいろいろ行った。

 幼稚園に入る前の子に見せても分からないのではないかと思ったが、妻の希望で出掛けていた。

 今日、久しぶりに家族四人で車で出掛ける。一年半ぶりで子供たちのはしゃぎ方がすごい。ずっとしゃべっている。二人を落ち着かせようとしている妻も楽しそうだ。      

 会社が大変で、大変で、大変で、休みなんてなかったから。

 

 車のいいところは、家族そろって出掛けられるところだ。

 あの世へも。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


 


 

 

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