第7話

 下校して家に直帰する。弟はやはり家にいる。

 リビングにいた。俺がいる時間にそこにいるのは珍しい。鼻歌を歌いながら何か読んでいる。のんきなものだ。

「ただいま。」

弟(ますます妹に見えてきた)は気づいて振り向いてにっこりする。

「おかえりー。」

なんかぽかぽかした気分になる「おかえり」だ。語尾が絶妙に伸びていた気がする。

「元に戻ったりしなかったのか?」

学校での野間の話のせいで、なんとなく気まずい。とりあえず質問する。まあ、そもそも美少女だから気まずいのだけれど。

「全然。なんにも変化がない。」

少し硬い雰囲気になる。仕方のないことだ。やはり性転換は信じられない出来事なのだから。

「そうか。いったい、どうなるのかね…。」

溜息をついてしまう。自然に戻らないとなると、真剣に対応を考えていかなければならない。

「まあ、まだ一日も経ってないし…。慌てなくてもいいかな、って…。」

いいのか、学校とか―、と言おうとして慌てて引っ込める。そうだ、弟は絶賛不登校中だった。学校に行けないのは変わりがない。

「…お前がそうなら別にいいけど。親はどう言うか分からないし、あんまりのんきに構えてると逆にイライラさせちまうぞ。」

「そういうものかな…。」

しゅんとしてしまった。このまま続けても、空気が重くなる一方だ。

「そういえば、その読んでる少女漫画は何だ?どっかで名前を聞いたような…。」

「あー、これ。「CCさくら」だよー。NHKでアニメ化してたから、結構有名。」

「でもどうしてそんなものが…。」

「家に前からあったよ。お母さんが買ったんじゃないかな?」

母親が買うには少し対象年齢が低いようにも見えるが。まあ、いいか。

「こうやって読んでても、後ろめたくないから嬉しい…。」

弟がそう呟いたのが聞こえた。後ろめたい?よく分からないな。俺だってリビングでラノベを読むのは後ろめたい気もするが、そんなの気にしてても始まらない。


 弟が意外のい平気そうだったので良かった。明日になれば戻るのか、そのままなのか。でも、ある程度この状態が続いても大丈夫そうだと思った。



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