エンドから始まり、最高のエンドを迎えるお仕事ラブストーリー

スーパーを舞台に、売り出しコーナー『エンド』を主軸として、主人公の棚森創と徳梅聖流、そして周囲の人々が繰り広げる、上質なお仕事モノ作品でした
誰しもが日常的に利用している場所でありながら、その細かい実情などは、従業員や業界を経験した者しか知らないのだなと実感しました。初見の情報がたくさん出てきて、勉強にもなります。

読みやすい文体かつ、1ページが長くない・細かい章分けでもあり、スイスイと最後まで読み進められました。
その流れの中で、創の成長や、年下大学生を翻弄する聖流さんのやり取りは、非常に『青春』していたと思います。中学生や高校生が主人公じゃなくとも――中々詰められない距離感や、スマホの画面を見つめて「返信はまだ来ないかな」と待ち望んだりと――シッカリと甘酸っぱさを感じました。

そして最終盤では、なぜ聖流が他人と『そういう距離感』で接するのか、二人がそれぞれどんな傷や痛みを抱えているのか、そこから再生していく様子など、とても満足のいく読後感を味わえました。未来への希望や明るさに満ち溢れており、まさに『最高に心動かされるエンド』だったと思います。
売り出しコーナーとは、店員とお客様との対話でありコミュニケーション。そして人と人の繋がりも、相手の心を思いやることから始まる。内容や展開がテーマとリンクしている作品は、それだけで好感が持てます。

ただ欲を言えば、終盤のバザールの秘策や展開が予想できてしまったので、もう少し意外性やアッと驚く盛り上がりを入れて欲しかった気持ちもありました。

しかし逆を言えば、それ以外に欠点らしい欠点が見当たらない、素晴らしい完成度でした。お仕事モノとしても恋愛ストーリーとしても高品質だと感じました。面白かったです。

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