第59話

〈伊織視点〉







「・・・・・不安?」





なんの不安だろうと思い優君の方へ

体を向けると彼は少し笑っておでこに

チュッとキスを落とした





ユウ「・・・・連絡してぇーけど…伊織嫌がるし…」





「・・・・何の話?」






そう質問すると「はっ?」と

優君の声が響いてガバッと

毛布を剥ぎ取る勢いで

体を起こした彼は少し

機嫌が悪そうにコッチを見ている…






ユウ「前に、四六時中連絡

  したくねぇって言ってただろ?」





「ん??いつ?」






本当に分からずそう尋ねると彼の眉間のシワは

段々深くなっていき(え?)と思った…






ユウ「前に…伊織からフラれた時に…」





「・・・・・・・」





ユウ「ガキみたいな恋愛は…疲れるって…」





私はあの時の事を「あたっただけ」だと

訂正していなかった事を思い出して

どうしようかと思った…




ユウ「・・・・・・・」





あの時の私の言葉がこんなにも彼の

トラウマになっているなんて知らなかった…





「・・・・あれね・・・あれはぁ…」





ユウ「・・・・・・・・」





優君の顔を見るとかなり不機嫌で

言葉が出なくなっていく…





ユウ「・・・まさかカッとして言っただけか?」





「・・・・ごめんね…」





ユウ「・・・嘘だろ?・・・はぁー……」






彼は大きくタメ息を吐いて右手で顔半分を

隠して下を向いたまま動かなくなった…





「・・・あの時まだ働いてて…」





ユウ「・・・・・・」

 




「・・丁度…三村さんに謝罪したりとかで…」





ユウ「・・・・・・・」





「・・・心に余裕なくて…スマホもあんまり…

  見てなかったし…こう、たまに??

  返事面倒くさいなぁーって…

  思ったりもしてて…

 

  そしたら優君が…待ってて…」





ユウ「・・・・・・・」





「・・・あの日言った事は…

 優君にあたっただけな部分もあって…」





ユウ「・・・・・・・・」





「・・・ごめんね?」






話してる間も優君は動かなくてずっと

黙ったままだった…





「・・・・ゅ…う君?」





ユウ「・・・・今は?」





優君の質問が分からず「え?」と

聞き直すと彼は顔を上げて

子供のように不貞腐れた顔でコッチを見ている





ユウ「仕事中…連絡とってもいいんだな?」





「・・・もしかして…

  ワザと送ってこなかったの?」





ユウ「あんな事言われたら送れねーだろ…

  伊織が連絡取るの好きじゃねーと

  思ってたから直ぐ帰れるように

  マンションもここにしたんだよ」





「・・そうなの??」





ユウ「昼だって…顔見に帰りてーから…」





「・・・お昼帰ってくるのは大変じゃない?」





ユウ「・・・あるんだよ…会いたくなる時が…」





「・・・私も優君がいない時…寂しかったよ?」





彼の私を思ってくれている気持ちが嬉しかった…

そして、私と同じように恋しく思って

くれていたんだと分かり彼への気持ちがまた

ドンドン大きく、深くなる…




優君の指に自分の指を絡めて

彼の顔を見つめた…





ユウ「・・・・俺を…好きか?」





「・・・・お仕事行っちゃうと…

  寂しいって優君を恋しく思うし…」





ユウ「・・・・・・」





「こんな風に私を…」





ユウ「・・・・伊織を?」





「・・・私を思ってくれる優君の事を…

  愛おしいって思うよ…」





ユウ「・・・・・・」






優君は私の頬に手を当てて優しく撫でながら

ゆっくり顔を近づけてキスをし

唇をそっと離して私の目を見つめてくる…






ユウ「・・・・俺は…お前しか見えてねーし…

  それはこれから先も一生変わる事はない…」





「・・・・・・・」





ユウ「皆んなから祝福される中で

  お前を最高に幸せな花嫁にしてやる」





「・・・・優君…」





ユウ「そして、子供を3人作って…

  家族5人で幸せに暮らしていく…


  そんな、ありきたりなお伽噺の未来でよけりゃ…

  俺がお前にくれてやる…」





「・・・・・・・・」


 



彼は…ちゃんと付き合いだしてから

引っ越しや未来の子供の話をする事はあっても

指輪を見に行こうと急かしたり

結婚式の話を無理に

すすめようとはしてこなかった…




( きっと待っていたんだ… )





私が彼と同じ気持ちになるのを…

待っていたんだ…





ユウ「・・・俺の手を掴んでくれるか?」






そう言ってあの時と同じように左手を

私の前に差し出してきた…




目の前の手が少し滲んで見えていて

自分でも知らないうちに彼からのこの言葉を

待っていたんだと気づいた…




私は笑って「はいっ」と言いながら彼の

左手に自分の左手を重ねてギュッと握り…





彼からの2度目のプロポーズを受け入れた…








♡FIN♡


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