神様が恋をしたのは、悪魔だけではない。

面白い。
まず、シンプルにその感想が浮かぶ。現在公開されている話数はけっして多くはない。だが、だからこそ話を読み終わったあとに襲われる飢餓感の大きさに愕然とする。
作者様は、残酷なことをする。
はやく私たちの飢餓感を癒やしてほしい。そう、出過ぎたことを思ってしまえるほどに、この話は人を引き込む力を持っている。

話は、悪魔使いたちと祓魔師の戦いを描いている。冒頭で、非常に感性の優れた詩的な言葉で紡がれる神話の中に、「神様は悪魔に恋をしていたのだと思います」という印象的な言葉が出てくる。
だが、本編で「悪魔」については「明確」には語られておらず、敵として出てくるのは悪魔「使い」だ。では、悪魔とはなんなのだろうか? ここでの明言は避けるが、オカルトとは対局ともいえる概念で小出しにされた悪魔の正体は、謎を深めるもので、さらにこちらの好奇心を煽りたててくる。
悪魔の設定一つとっても、単純ではない。
複雑で重厚な世界観と設定が、現状の話数からでも明確に察することができるだろう。

また、作者様がとくに優れているのは情景描写における空気感の出し方である。ローカロリーな文章だが、軽すぎることは決してない。無駄がないのだ。その無駄を省いた文章は、確実に読者の目を疲れさせることなく想像をかきたて、情景を色鮮やかに起こしてくれる。
それは、実力がなければできることではない。作者様の能力の高さが伺える。

個人的にはキャラクターも素晴らしいと思う。クソ真面目で融通のきかないツンデレな主人公黒沢と、謎の多いマイペースなヒロイン乃蒼。彼女たち二人はともに祓魔師で、その思想と行動原理に決定的な違いがありながらも、バディとして行動している。これからの二人の活躍と、関係性にも目が離せない。


謎の多さ、話の複雑さ、重厚な設定、すぐれた情景描写、イキイキとしたキャラクター設定。一読の価値ありだ。

私の拙い文章では、この作品の魅力をこの程度でしか伝えられない。慚愧の念にかられるが、どうかもっと沢山の方に読んでもらいたいと思う。

ただ、忠告するなら。
飢餓感が半端ないから気をつけて欲しい。

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