最後の一文が堪らない

 神さまになることを宣言し、本当に神さまになったという幼なじみ「加奈子」について語る冒頭。すべて過去形という点が非常に不穏ですが……。

 次に加奈子からの手紙が来て、最後の方でちょっとびびりました。まあ違う世界の存在になったなら、そういうこともあるでしょう。

 そして恐ろしいのは、結末とそのつけかた。

 アキラくんの件は「考えすぎじゃない?」と思ったのですが、その後に明かされる事実と、一話で語られてきた「加奈子がどういう少女だったか」という情報がすべて有機的に結びつき、ゾッとする破滅の予感をさせて終わります。

 タイトルの「羽化」はてっきり人間から神さまになった加奈子のことを指していると思ったのですが、それだけではなかったという使い方。

 そして「やはり、神様になるのは大変でしたか。」というキャッチコピーも、振り返ってみると空恐ろしいものがあります。

 彼女がどのような手段を経て神さまになったのか、詮索は無意味というものです。ただ、主人公が最後に呼んだのが「加奈子」という人間の名前ではなく、すがるような祈りの言葉であったという絶望感の演出がまたたまりません。

「短編ホラーはこう書くのだ!」と突きつけられるような、読書体験の作品でした。

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