再会に、乾杯!

 再び、この世界に出会えるとは思っていなかった。

『魔術士探偵物語〜アルムウォーレン事件簿〜』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054886962482

 だが、目次にもあるように、出会いと別れと再会の街、だと言う。
 私も酒杯を掲げ、乾杯を。

 とは言え、この作品――短編集――から読んでも差し支えの無い内容と完成度となっているので、これからの読者には安心をしてもらいたい。

 安心できるかッ!
 ☆を減らしたい!

 何故、この内容と完成度で、1本の筋の通ったストーリーと主軸なるキャラクターを以て長編にしなかったのか。そう言いたくなるクオリティであるからだ。
 ☆を減らしたい!

 キンキンキン! みたいな剣戟もないし、チュドーン! みたいな魔法も出てはこない。ステータスオープン! みたいなスキルも、ない。

 あるのは、そこに生きる人々の、出会いと別れと再会と、悲喜交々だ。側面だ。断片だ。
 世界の全てを知る由もない。謎の中枢にも迫らない。最後の巨悪との対決もない。
 ☆を減らしたい!

 ひと言で表せば、フレーバーテキスト。
 ああ! ☆を減らしたい!

 読み終えて思うのは、たおやかに実を結んでいる、ということ。
 水のように、あるべきところへ流れていく。
 この作品の、世界の、そこに生きる人々への誠実さ、物語の構成が、造形が、実像を結ぶ、その作者の誠実さに尽きる。