第19話 入居日
先日、婆さんが特別養護老人ホームに入居した。
家族の前では毅然としていたし、諦めたようなことを言っていたけど、車の中では泣いていたようだ。
コロナの影響で、婆さんの入居する部屋には行けなかった。
だから、婆さんが生活するのを、想像できなかった。
コロナの影響があるから、面談もしばらくお断りだそうだ。
だから、家族皆で思う。
(婆さん、今頃、何してるかな?)
婆さんの分がない食卓。
茶碗も皿も箸も、ない。
その空白が、ちょっと寂しい。
でも、僕は介護をやりきったから、後悔はしていない。
コロナが収束すれば、会いに行けるし。
介護ってキツイ。
だって、体力も時間も精神力も奪われるから。
介護って汚い。
だって、糞尿をまき散らすから。
介護って臭い。
だって、お漏らしするから。
介護って給料出ない。
こんだけ頑張ってるのに、見返りは罵詈雑言。
介護って理不尽。
やって当然だと思われてる。
だから、それでも自宅介護する人を僕は尊敬する。
だから、頼れるものには、全面的に頼って良いと思う。
介護には、必ず終わりが待っている。
最後の最後に、後悔だけはしたくなかった。
だから僕は自宅介護をした。
でも、それも今日でお終いだ。
もう、自宅で介護しなくなるから。
僕が自宅介護をする理由は、沢山あった。
もう過去形。
介護というものが、社会問題なのだと痛感しました。
<了>
『僕が自宅介護をした理由』 夷也荊 @imatakei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます