第18話 名入れ

婆さんの荷物、全てに名前を書く。


危うく、自分の名前を書きそうになる。


焦る。


名前を入れたら、貰って来たリストにチェックを入れる。


これは入れた。


これも。


これも。


昔の葬式がやることが満載だった。


目が回る忙しさだった。


もちろん、昔は葬式業者なんていない。


この忙しさに、似ている、気がした。


昔の葬式のスケジュールが厳しかったのは、

亡くなった人を想って泣いてばかりいることを、

防ぐためだったんじゃないか、と思う。


だって、一番凹む時に、次々とやることがあれば、

泣いていられない。


ひと段落着いた時には、

涙はもう出なくなっていて、

思い出に浸ることが出来る。


入居準備のスケジュールが厳しいのも、

きっとそういうことなんだと思って、

次々と名前を書く。


これで最後。


全てが、これが最後になっていく。


僕が自宅介護する理由は、

もう少しでなくなろうとしている。


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