彼らにできる唯一のこと

 それぞれ複雑な家庭に生まれた子供ふたりの、とある小さな旅の物語。

 シリアスな現代ものです。タイトルのぱっと見の印象とは全然違った雰囲気でありながら、でも確かにタイトル通りの内容ではあるお話。
 嬉しいタイトル詐欺というか、単なる意外性以上のものをぶつけてくれるところが素敵でした。まさに物語で殴りつけられた感じ。

 ままならない現実と、そのどうしようもない行く末が描かれており、ざっくりいうなら悲劇、ということになるとは思うのですけれど。しかしただ悲しいばかりではない、彼らの精一杯の行動が胸に刺さります。

 現実はどうにも変えようがないし、その旅は逃避行にもならない短いもので、しかも最初から彼ら自身にもそれはわかっているのに、それでも進んだ小さな旅路。無駄で無益な抵抗かもしれないけれど、それでもきっと大事なよすがになるかもしれない何か。
 とても綺麗で、でもこれを勝手な傍観者目線で「美しい」なんて評してしまうのは、それはそれで彼らに申し訳ないかなあ、なんて思ってしまうお話です。

 地獄の底のような悲劇でありながら、でもそこにキラキラ光る小さな宝石を見つけたかのような、寂しくも素敵な作品でした。