第10話 晩秋の記憶

「晩秋の記憶」


子どもの声を恐れていた

僕が見上げたのは

頼りない晩秋の空

みしみしと音をたてる

澄み切った湖畔の色


子どもの顔を思い出していた

僕がたたずんでいるのは

果てしない暗闇の中

さらさらと流れていく

乾ききった落ち葉の夜


今になって思い出すこと

今になって後悔すること

父を想い涙する我が子に

手をさしのべることさえできない

声をかけることさえ許されない


業火に焼かれ燃え尽きていく屍

晩秋の記憶

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晩秋哀歌 詩川貴彦 @zougekaigan

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