孤独を握る

蒼狗

孤独を握る

「いっしょにおいでよ」

 あの日の光景が脳裏によぎった。

 公園で一人、木陰のベンチに座る私に声をかけるあなた。言葉に詰まる私の手を握り、引っ張り上げてくれた。あの瞬間、あなたは太陽のように輝いた笑顔を私に見せてくれた。

 あなたにとっては普通のことだったのだろう。でも私にとっては特別なことだった。

 一人ぼっちの私に手を差し伸べてくれたあなた。あの時間は何物にも代え難い甘美なものでした。

 だからあなたを殺しましょう。

 暗闇に取り残された、一人の私に再び成るために。私の手を再び握ってもらうために。

 きっと、あなたなら私を見つけてくれることでしょう。

 手の平に伝わるこの温もりが消える頃、あなたは再び現れてくれますか?

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孤独を握る 蒼狗 @terminarxxxx

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