茜色した思い出へ

一緒に暮らしているとあるカップル。幸福感溢れる食卓の光景だが、「俺」の中ではフラッシュバックする過去が……。
衝撃的なプロローグから始まるショートショート。不気味さと怖さともの悲しさと切なさとで、ハラハラしながら読み進めていきます。
断片的な物語からも、「俺」の過去の全体を察することが出来ます。特徴的な文章によってリズムよく、しかしどっぷりと、描かれるワンシーンにのめり込みました。

　壮絶な夢の記憶に苛まれる男性の、ある日の食卓の物語。

　苛烈な導入から始まる、ホラーテイストな現代ドラマです。
　なんといっても冒頭の夢のシーン、バイオレンス感たっぷりの鮮烈な光景が印象的。

　それも単に暴力的というだけではなく、なにやら禁忌めいた雰囲気も感じられたりして、このなんともおどろおどろしい手触りが魅力的でした。
　圧を感じるというか、何か嫌な予感みたいなものにジリジリ追い詰められるような読み心地。

　分量にしておよそ2,000文字強と、サッと読めるコンパクトな小品でありながら、みっちり濃厚な独特の空気を感じさせる作品でした。