茜色した思い出へ

あきかん

茜色の夢

 いつも同じ夢をみる

 茜色に染まった世界は

 血をぶちまけられた様な赤一色で

 そこに立っている俺の手は

 実際の血で汚れていた


 動かぬ物に変わった妹は

 俺の足下に転がっている

 妹の手首を切った包丁と

 テーブルに並べられた夕食と

 水に漬けられたフライパン


 俺も直ぐに後を追うよ

 と妹に語りかける

 妹は何も語らない

 何も語れない


 音がしない

 愛していると言った声も

 殺してやると叫んだ声も

 無声映画のようなこの夢の中では

 静寂でかき消される


 あいつの声を聴きたいと願っても

 どうしても思い出せないのだ


 

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