第74話 様子見をしたところ……?

「ユウ君、舞さんのおっぱい揉んだ事ある?」


「いきなり何を言い出すんだ君は……」


 ほぼ半分くらいの道を歩いたところ、玲央ちゃんが頓珍漢な事を言い出した。

 寝不足でネジが緩んだか。


「じゃあ光さんのおっぱいは?」


「ないよ。というか何で揉む前提になっているの?」


「だってユウ君ショタなんだし、おっぱいの1つ2つ揉んでもおかしくないっしょ。というか舞さん達、揉んでって言われたら2つ返事でOKしてくれそう」


「あのね……舞さん達はそんなビッチじゃないんだから」


「ちなみに波留ちゃんも舞さん達ほどじゃないけど、それなりのモノを持っているよ。先端がピン……」


「それはいいから!!」


 コイツは俺に何を吹き込もうとしているんだ!!


 こう言っては何だが、玲央ちゃんは女の子というより同年代の男友人みたいだ。少なくとも女子力が感じられない。


 ただもったいない。彼女も割と可愛い顔立ちをしている方だ。

 その辺をグレードアップしてオシャレすれば、絶対に舞さん達に匹敵するはずなんだが。


「どうしたの、私を視姦して。視姦するなら舞さん達の方がいいよ」


「女の子から視姦なんて言葉が出てくるとは思わなかったよ。いや、玲央ちゃんって結構可愛い方だから、オシャレすれば映えるんじゃって思ってさ」


「…………」


「…………玲央ちゃん?」 


「……ヘヘ……」


 何故にニヤけた。

 あと顔が赤い。


「ユウ君から言われるなんてご褒美なんだけど……」


「そ、そう……」


「まぁ、確かにアキ君から『お前も公崎さんみたくすれば結構変わると思うんだけどなぁ』って言われているけどさぁ、化粧とか面倒くさいじゃん。よく舞さんも波留ちゃんも出来るよね。チートじゃん」


「そんなもんかな……」


「あとさ、オシャレな服とかバッグとか買うくらいなら、プラモとかフィギュアとかゲームとかに回した方がマシ。服は着れれば何でもいいじゃん」


 言われてみれば、今の玲央ちゃんは白シャツに半ズボンと「これ着とけば十分でしょ」的な見た目をしている。

 舞さん達なら絶対にありえない服装だ。

 

「でもやっぱりもったいないと思うな……っと、やっと見えてきた」


 話している途中に、前方から巨大な影が見えてきた。

 真っ二つに泣き別れしたファーヴニルの死体だ。


「おー、これがファーヴニル。ロボット怪獣って感じだぁ、すげえなぁ」


 玲央ちゃんがまるで動物を見るよう感じで、死体を観察していた。

 もっとも彼女はお留守番していたので、コイツの姿を見るのは初めてだ。それは興味津々にはなる。


 それよりもファーヴニルの死体は相変わらず変化ないようだ。

 動く事もなく、溶ける事もなく……もしかしたら溶けないタイプだったのだろうか? そうなると死体処理がややこしくなるのだが。


「……あれ」


 何かが足りない。そんな気がした。


 注意深く見てみるとやっと分かった。コイツの下半身がない。

 上半身のすぐ近くに倒れていたはずなのに、それが忽然と消えてしまっているのだ。


 俺は下半身があったはずの場所へと向かった。

 やはり影も形もない……と思っていたら、そこの地面だけに蜘蛛の巣のような裂け目があった。


 もしかして、下半身が溶けて地面に浸透したのだろうか?

 この裂け目は浸透の際に出来たものだとすれば……。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴ……!


「ん? 地震?」


 突如として地面が震え出した。

 日本が地震大国だけあってか、玲央ちゃんが呑気な事を言ってきている。だが次第に揺れが激しさを増していった。


 何かが……おかしい。


 直感に似た不安を感じていると、地面からミシ……ミシ……と音がしてくる。


「玲央ちゃん!」


「えっ、うお?」


 俺が玲央ちゃんを抱きかかえてジャンプした瞬間、地面から物体が出てきた。


 さらに俺達がいた場所だけではなく、あちこちにその物体が生えてくる。それが互いに合体し合い、壁になろうとしていた。


「ユウ君、こういうのは波留ちゃんにやった方が……」


「…………」


「ユウ君?」


 俺は前方の現象に目を奪われてしまっていて、玲央ちゃんに返答すら出来なかった。

 さらに自分のいるところにも地割れが起きる。もう1回下がっていくと、やはりそこからも物体が生えてきた。


 なるべく遠くに離れてから、ある樹の上に立った俺達。

 その間にも物体が結合や巨大化を繰り返していき、森を呑み込まんばかりに広がっていった。


「……これは……」


 地震が止んだ頃には、森に巨大建造物群が形成されていた。

 

 銀色の金属をした壁。ブロックを雑に積み上げたような形状。

 高さは……ざっと100メートル以上か。広さについてはよく分からないが、とにかく森から目立つくらいには広いといったところだ。


 というかこれ……そういう事だったのか……。


「……何だろうねユウ君?」


「ファーヴニルの仕業だ……。アイツ、自分の流体金属であの建物を作ったんだ……」

 

 あの建造物は十中八九、ファーヴニルの流体金属で出来ている。


 地面から現れたのは、そこに流体金属を浸透していたからだろう。下半身が消えたのは、その流体金属を補う為だったのだ。

 そもそもこのような性質を持っている怪獣……というかロボットを俺は知っている。


 流体金属からもしやと思っていたが、まさか本当に巨大建造物になるとは……というか見た目とかまんまだ!

 あれはまさしく……、


「どうみても決戦機動増殖……」


「あれ、ダンジョンじゃん!」


「ん?」


 俺が言う前に、玲央ちゃんがそんな事を叫んでいた。


「ダンジョン?」


「異世界ファンタジーに出てくるダンジョン! 知っているでしょ!? これ絶対に内部に魔物がいるって!!」


「……ああ、確かにそう見えるかも」


 森に佇む巨大建造物というのがダンジョンそっくりだ。なるほどそういう見方もあるのか。


 ただ見た目だけなので、さすがに魔物が潜んでいる訳が……、


「……と思ったらいたのか」


 前言撤回。

 建物に空いた穴から、ゾロゾロと複数の影が出てくる。


 以前倒したリザードマンだ。ただ生物的だった前の連中とは違い、体表が金属的な鎧をしている。

 由来は分からないが、いずれにしてもその光景はまさしく「ダンジョンから姿を現す魔物」の様相だった。


「こりゃあ奴らを狩らないといけませんな、ユウ君」


「まぁね……変身しようか」


「おけい。魔装」


 先に玲央ちゃんがマレキウムへと変身し、樹から飛び降りた。

 俺も続いて飛び降りようとしたが、ここであるひらめきが出てくる。


 これは我ながら良い事を思い付いたのでは?


 下を見ると、マレキウム姿の玲央がリザードマン達と戦っている模様。

 俺は飛び降りながら彼女へと声を張り上げた。


「玲央ちゃん、一旦離れて!!」


「ん?」


 玲央ちゃんが見上げたと同時に、俺はソドムへと変身した。

 

 玲央ちゃんはギョッとしながらもすぐに退避。彼女と戦っていたリザードマン達は呆然と見上げていたので、そのまま俺によって下敷きに。 

 結果として地面にクレーターが出来上がり、リザードマンらはその中へと消えていった。


「ユウ君、何が始まるんです?」


「大惨事大戦だ。……そういや俺の言葉分かるの?」


「えっ? 普通に聞こえるけど?」


 以前、俺の言葉は普通の人間には伝わらないと聞いた事があった。

 まさか問題なかったのは意外だったが、玲央ちゃんはその『普通の人間』ではないから通じたのかもしれない。


 それよりも踏み潰したものとは別のリザードマン達がやって来る。

 ちょうどいい……降りかかってくる火の粉は蹂躙してくる!


「グオオオオオオンン!!」


 果敢にも飛びかかった個体がいたので、鋭い牙で噛み砕く! そしてすぐに吐き出す!


 吐き出したリザードマンがバラバラに砕けてしまったので、ファーヴニルの流体金属で作られた紛い物かもしれない。

 しかしそんな事など、俺の猛攻の前はどうでもいいものだ!


「もっと来い!!」


 ――グオオオオオンン!! ギャビッ!!


 巨大な腕で叩き潰す! 踏み潰す! そして≪ロングテイル≫でチクチクと刺し貫く!


 次々と迫り来るリザードマンをことごとく潰していく。

 人間形態で戦うよりもはるかに簡単だ!


「おお、まさに弱い者いじめ」


「コイツらを弱い者なんて言わないよ。やっぱり引いた?」


「いんや、実にナイスだよ! 俺TUEE最高!!」


 などと言いながら、玲央ちゃんが自分に向かってきたリザードマンを斬り捨てていった。

 玲央ちゃんの考えはよく分からないが、とりあえず敵の数は減った。


 あとはこのファーヴニルが変化した巨大建造物をどうにかするだけだが……あの前世の某増殖都市と同じならを仕掛けてくるかもしれない。

 不用意に近付かないよう、俺は玲央ちゃんに伝えようとした。


 ――ボオオオオンン!


「……! 敵……いやアメミットか!」


 遠吠えが聞こえたと思ったら、背後からアメミットが走ってきた。

 となると、


『悠二君、聞こえる!?』


「舞さん! やっぱりこれに気付いたんだね!」


『うん! アメミットが援護してくれるし、後で光ちゃん達も来るから!!』


 そう舞さんが言った後、アメミットが俺達の横を通っていった。

 マズい……このままでは。


「舞さん、アメミットを止めるんだ!!」


『えっ?』


 ――ドオオオオオンン!!


 俺の制止はむなしく、アメミットは頭部を撃ち抜かれてしまった。

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美少女JKに可愛がられる怪獣少年 ―怪獣に変身できる少年に転生したけど、どうもあどけない可愛さらしくてヒロイン達を魅了にさせてしまう件― ミレニあん @yaranaikasan

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