群像に溶けゆく葛藤

性差が生む不条理。男女それぞれの世界。
そうしたものを扱った作品は多く、今も様々な媒体を通して生まれ続けています。そして作品の数だけ葛藤が生まれ、受け手はそのことを考えさせられているといっても過言ではないでしょう。本作もその例に漏れず、葛藤をテーマの一つとした作品なのですが、特筆すべきは作者様の物語を形作る手腕にあります。

鋭く切り込み、登場人物のあるがままの心を掬い出す繊細さ。それだけに留まらず、抽出したものを軽妙かつ洒脱な詩にしてしまうのですから、読み手はもう作品に引き込まれっぱなしです。気移りする暇すら与えてはくれません。そんな魅力的な筆致で紡がれるのは、ひたすらに生きる女たちの群像。ひたすらに生きる、これこそが本作の醍醐味です。劇的な変化が起こるわけでもなければ、いつだってハッピーエンドが待っているわけでもない。だからこそ惹かれるのでしょう。その生き様と哲学に、そして——。

女たちのみせる瀟洒な振る舞いの中で見え隠れする、脆さや危うさといったもの。それらがときには気丈に、またあるときには狡猾に描写される。そこに感じるものは、一人一人で違ってくるはずです。是非ともその違いを皆様自身の感性で楽しんでいただきたいです。この作品がより多くの方の目に留まりますように。