おんなの小話

真砂 郭

道化師の夜

ああ、夜が明けたら


私はクールダウン

冷めて

覚めたら

朝が煌めく


嘘つきだらけの

朝が来る

風が吹く風が吹いたで

向こうの通り


私の足音

何してたんだ

一晩限りの乱痴気騒ぎ

飲んで踊って

笑って

泣いた


片隅の夜はどこかに行った

大人になって

行っちまうのよ

私とワタシ


引っ掛かっては

引きずって

酒と涙で流し出す

黒い私のパラダイス


ああ、それでもワタシ

楽しかったよ

うれしかったよ

ピエロの夜はひとりぼっちが

寂しくて


苦しかったよ

悲しかったよ

吐き出したくて

酔う私


うずくまってはいられずに

這いつくばってもいられない

蹴っ飛ばしてやれ

昨日のわたし


昨日のワタシは泣いているから

今日のわたしは笑うのよ

笑い飛ばして夜を行く


メロディーラインが川のよう

あふれ出すのは星の海

波間の埠頭で待っているのは

誰のこと

夜の終わりが待っていた


静かな朝が芽生えてる

振り返ってもワタシはいない


目が覚めたから

ワタシはいないの

夜明けの街にピエロはいない


コンクリートとアスファルト

それが私の今日と朝


道化師が厚化粧を落として

朝が来た

それでも私は装うの

やっぱり私は化粧の女


ここにしかいない女になるために

ここにしかいない私になるために


雑踏は飲み込んでゆく

ヒトの河

今日のわたしが街を行く


明日のわたしはどこにいる

クールな私

ホットなワタシ


空の色は蒼くて哀しいけれど

ワタシはイケてるイイおんな

みんなそう言う

街の女(ヒト)


いいじゃないのよ

言わせておけば

きっと私は風になる

そして私は水になる


自由なワタシは空になる

道化師は翼を生やし

宙(そら)を飛ぶ


天上のピエロは微笑んで


夜空を舞うと

星になる

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