懲りない女

アタシは暗い海の夢を見る


海の中にはクジラが泳ぐ

暗くて黒い瞳の奥で

さえずるように歌ってる


あなたの声が聞きたくて

ラジオのようにチューニング

周波数に澄ませば耳に

あなたの鼓動の音がする


ああ、もうこれで

ええ、これからも

そしていつの日か


ボサノバの暮らしの中で

サンバのように駆け巡る

アタシの人生カーニバル


逃げも隠れもしないから

誘いの言葉は届かない

あなたとワタシそれとも誰か

追いかけ続けて誰が聞く


クジラの骨のレゾナンス

地球の果てでだれが泣く

海の向こうの

入り江の奥に


群れるクジラの背中に乗って

揺れる波頭のしぶきを浴びる

あなたを探してどこまでも


周波数ならチューニング

どこにいるかは分からない

何処かにいるかは分かってる

探して覗いて

聞き取って


潜水艦で追いかける

ソナーの音がヘッドフォン

聞こえてくるのは

聞こえてきたのは


誰かとさえずる恋の調べ

何処かで聴いたあの声に

私の心はロックオン

発射しちゃえば

おさらばよ


それでもアタシは聞いている

あなたのさえずる恋歌に

聞き惚れちゃって片思い

誰かとあなたの恋歌が

途切れぬように聞き澄ます


あなたと一緒の恋の顛末

語るつもりの当て外れ

積もる思いを魚雷に乗せて

水底深くに撃ち込めば


盛大に水柱がと思いきや

あぶくの泡がプクプクと

水面(みなも)に浮かぶ

味気無さ


腰が抜けたわ

滑稽すぎて

笑ってしまうアタシの思い


もう追わないわあなたの声を

もう探さないアタシの心を


海の心は深くて暗い

きっと誰かが探してる

クジラの夢を追っている

あの声は誰の声、だけどね


離れ小島で目が覚めた

南の果ての小さな島に

サンバのリズムで駆け出した

そうよ今夜はカーニバル

踊り騒げば

踊り続ける


アタシのバカに喝采を

ショータイムのつかの間に

波間に踊る

つがいのクジラの夢を見た


ああ、もう治らないチューニング

周波数を追えないアタシ

青い海原

マグロを追って

一本釣りの広い海

アタシの夢は終わらない

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