ファムファタル

街がため込んだ何かを吐き出して

おぼろに揺れて歪む空


それは熱気

それともため息

甘い香りか苦い息使いの

よぎる季節の狭間に独り


秋の染み込む空気を吐いて

陽はゆっくりと陰る蒼い空


ワタシはそれに酔いしれる

珈琲のように

香りと匂いに包まれる

それは午睡の夢か

幻よ


街は昼下がり

アスファルトは冷めていて

ワタシの心は褪めている

夏の心はもういらない

それでも気持ちがチリチリと

何処かで置いてきぼりが

叫んでる


ワタシは知らんぷり

横顔に映る硝子の心に

ヒビを刻んで覗くワタシの

歪んだ季節


「それでよかったの?」


目に入る携帯のメッセージが瞳に染みて

滲む画面の後を追う


こんなことなら

あんなときこそ

ああ

それは遅すぎる言葉の羅列


「削除したい」


そんな自分の言葉に心が震えた


消え去るのはワタシの心のメモリアル

忘れられるのはワタシのほうだ

いやだ

嫌だ

イヤだ


繰り返すワタシの鼓動のように

終わらないのよ

いつまでも

否定の言葉が続くのよ


やめてしまいたい

止めてしまいたい

辞めてしまいたい


オシマイのピリオドが打てないワタシは

繋がりたいと言い訳を打つ

逢いたいと嘘を吐く

そう言い聞かせて

携帯を閉じる


言ってしまったことに

後悔が少し

安堵は一杯


それでも(間に合った)

それでも(遅すぎない)

ワタシは救われたいのよ


それでも彼はワタシのウソを知っている

みんな貴方にお見通し、だから

それでもいいの?

それでよかったの?

あなたにそう言ってほしくて


ワタシは彼を試すのよ

ワタシは自分を試すのよ

運命は誰に味方するの?

確かめたいワタシを

ヒトはきっと、こう呼ぶわ


「運命の女」と


ワタシはそれに耐えてみせる

貴方の愛を受け止めるに足る

そんな”おんな”になってみせてやるわ

貴方に損はさせないの


そんなワタシに応えてくれるから

たとえ世間が何と言おうと

貴方を「踏み台」にするに足る

そんな女になってやる


お願いだから…

そんなワタシを支えて頂戴。

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