第12話 お腹空いたな・・・・・・。
(マジおっかねえ・・・・・・)四方を覆うように囲む巨大な顔を見上げながら
大人に取り囲まれるって、こんなにも恐ろしいものなのか。――それとも、濃紺の制服とツバつき帽子という警察官を思わせるような駅員の服装が、威圧感を増幅させているのだろうか。
今まで、教師や親たちに散々叱られた経験はあったものの、今、ここで取り囲んでいる大人たちから噴き出る憤怒のオーラは、
ついに、
期せずして地縛霊から守護霊にクラスチェンジした
正確には、電車を急停止させてしまった
乗客の命を預かる立場にある駅員であるからこそ、その責任感に裏付けされた叱責は苛烈を極め、かつ、その発言は至当であり反論の余地もない。
叱責、譴責、大喝、訓戒、ありとあらゆる口撃を公衆の面前で三十前のいい大人が一身に受け肩をすぼめている。
ようやく責め苦から解放された
人もまばらな昼下がりの駅のホームに、ぐったりとベンチにもたれかかる青年がいる。青年の肩の上には、二人の守護霊が力なく首を垂れて、背中合わせにしょんぼりとしゃがんでいる。
そのベンチの傍らで地縛霊の夕子が心配そうな面持ちを浮かべ、二人の守護霊にかける言葉を探したものの、言葉は見つからなかった。
夕子の考える守護霊とは、もっと遠くというか高い位置にある存在で、人々を包み込むように見守り、事が起きれば、説明のつかない奇跡を起こすという天使のような高位な存在をイメージしていたのだが、今、夕子が見下ろしている
これは、あまりにも夕子の考える守護霊のイメージと乖離していた。
突然、
腹の虫に操られているかのように、
それに呼応するかのように、小さくうずくまっていた
「お腹空いたな・・・・・・」
ボソッと呟いたその声の主に、夕子は驚愕し目を丸くする。
おばあちゃんも目を見張っている。驚きを隠せないようだ。
「ほ、
「うーん。なんでって聞かれてもねぇ。――お腹が空くのに
意味が分からんと言いたげに夕子を見返す。
「いや、そういうことじゃなくて、肉体を持たないあなたが、どうして食事を欲するのかということよ。今までお腹が空くことなんてなかったでしょ? それとも守護霊ってご飯食べるの?」
「そーいや、そうだね。――どうなの?」
二人の眼がおばあちゃんに向けられる。
「そうね。確かに不思議ねぇ。お嬢さんたち、いいかしら? そもそも私たちは幽体なのだから、肉体から起因する三大欲求である食欲、性欲、睡眠欲から解放されているはずなのよ」
「えっ⁈ そうなの? この子、夕子っていうんだけど、夕子って性欲の塊みたいな女だよ。夕子がなにかしゃべると、全部えちえちな言葉に聞こえちゃうんだから。きっと、いつもエロイこと考え――グエッ!!」
夕子が、
白魚のような指とはいえ、人形サイズになった
「ったく、余計なことを言うな。あなただって煩悩の塊のくせに。――それに何? えちえちって? そういう言葉はすぐに覚えるのね」
下等な生き物を見るような眼で
「よく分からないけど、この子の身体に取り
おばあちゃんは、
「そうですね。彼の身体に取り
つまり、空腹を覚えたのは
「さて、なに食おうかな」
東〇東上線のJK地縛霊 Cockatiels @paruhaku
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