登場人物の豊かな感情や甘いお菓子が素敵な作品です。

中心となる三人がこの五十四話の中で見事に描かれ、それぞれのキャラクターが印象に深く残ります。彼らを取り巻く年長者の愛情が読み手まで喜ばせるような、巧みな関係性の描写が魅力的です。
食べ物を食べるシーンでは、まずいものが「まずい」と説明されていても読んでいて不快にならないような快さがあり、美味しいものを書く筆致に至っては喉の奥が甘さを求めてうずくような素晴らしさがあります。
全ての章が無駄なく積み重なり、読者にじんわりとした感動を与えてくれる作品です。

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