第70話 付き合って10年、結婚して3年。

何でもない休日。

私たちは映画を見に行った。


付き合っているときから映画が好きな私たちはよく映画館へ行き、気が付けば10年が経とうとしている。



映画のチケットを買い、始まるまでの数十分、珍しくゲーセンに行こうという夫。

久しぶりに映画館の隣のゲーセンに寄ってみた。


学生の時、デートでゲーセンに行き、クレーンゲームでぬいぐるみをいくつかとってもらった記憶がある。


私の好きなぷーさんとオラフという名のスヌーピーの仲間を取ってくれたのはよく覚えている。何度も挑戦して取ってくれた若かりし頃の思い出だ。



ふと私は「ロッソ可愛いー」とクレーンゲームへ近寄った。


「よしボーナス入ったからやるぞ」

そんなことを言って夫は久しぶりにクレーンゲームと戦った。


まさか本当にやるとは思わず。


しかも1000円かけて、本当にとってくれた。


思わず2人とも「うわ!」

とれた瞬間声が出だ。



学生ぶりに年甲斐もなく、ロッソのぬいぐるみを抱いてゲーセンを後にした。

そしてぬいぐるみを抱いたまま映画館へ。


この年になって恥ずかしいが、久々のデートな感じがして嬉しかった。

毎日一緒にいるけど・・・。



映画を見終わって、夜遅くに帰宅する。


映画館で余ったポップコーンを持って帰って、家で食べた。


お互いにポップコーンを投げて口でキャッチする。

ゲラゲラと笑い転げる。


無邪気に笑う姿を見て嬉しかった。



何でもない休日が平和に終わる。

おやすみと言って眠りにつく。



こんな何気ない出来事が楽しいな、嬉しいなって思った。


喧嘩ばかりの私たちだけれど、ゲラゲラとふたりで笑う瞬間が好きなのだと感じた。



付き合って10年、結婚して3年。

そんなものだ。


大きな何かを期待してがっかりするんじゃなくて。


温かい幸せ、何でもない普通の日常、何かほっこりするものがあればそれで良いんだ。


そうやって続いていけばいいな。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゆるりじわりほろり人間観察日記。 葉月 心海 @hazuki-kokomi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ