第69話 上手な人と教えるのが上手な人

ダンスが上手な人はいくらでもいる。


不思議なことにダンスが上手な人が、教えるのが上手とは限らない。


だから有名なダンサーに習えば上手になるかといったらそれはまた違うかもってこと。



「ダンスが上手な人はたくさん出会ってきましたが、インストラクターをやってほしいという人にはなかなか出会わないんですよ。」


そう言ったスタジオのオーナーと私は、面接なのか世間話なのかわからない時間を過ごした。


私は自分から「インストラクター募集していませんか。」そう連絡したダンススタジオのオーナーに呼ばれ、早速スタジオで話すことになった時の話だ。



初めて会ったのに、気が付けば2時間近くもノンストップで話していた。


どうやってダンスを始め、ダンスをどうやって続けてきたか。

ダンスをどう思っているか、ダンスをどうやって続けたいか。

ダンスをどうやって伝えたいか。


ダンスについて語る時間はとても楽しく、オーナーは優しく私の話を聞いてくれて、またダンスの話を聞かせてくれた。



初めて会って話したときに

「ここでインストラクターをしてほしい」

そう言ってもらえた。



ダンスを離れていた時期もあり、結婚してから仕事のブランクがあった私にとって、誰かに必要とされることがこんなに嬉しいのかと実感した。


一緒に仕事がしたい、そう言ってもらえることがどんなにありがたいか。


私という存在が迷子になっていた感覚から拾い上げてもらった。



そうして、私は久しぶりのダンスインストラクターとしての道を再スタートした。


あきらめることはない。

そう自分自身に教えてもらった。


ブランクがあっても、歳を重ねても、好きなことを再び始める喜び。



しかし現実は、嘘はつかない。


しばらく病んでいた私の体は、体重も筋力もだいぶへり、体力は落ちている。

でも弱音を吐いている時間はない。


ジムに通い、家で筋トレをし、歩く。


体を鍛えなおすことろから再スタート。



私の筋力、体力よ。

頑張ろうじゃないか。



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