主人公の弥代は、アップルパイが美味しかったからという理由で、パートナーの景と結ばれた。それ以降、彼からアップルパイを食べたいと言われなかった弥代だが、ある時ついにアップルパイを望まれてしまう。しかし、弥代はアップルパイが嫌いだった。彼女が景にあげたのは、自分が作ったものではなかったから――。
と、アップルパイが嫌いなのに、愛する人のために作らざるを得なくなってしまった弥代。今度は自分で作ったものをあげたいと頑張る彼女が微笑ましく、けれど不安も伝わってきます。
そんな弥代には、とある呪いがかけられているのですが、果たして一体どんな呪いなのか、弥代やアップルパイとどういう関係があるのか。それは、ラストシーンの余韻に浸りつつ、ご自身の目で確かめてみてください。
アップルパイに呪われて——。
このタイトルから、こんなに優しい物語を想像することができただろうか。
嫌な思い出と良い思い出、二つが同時に重なり合った結果、アップルパイが一番嫌いだと冒頭から言い切る主人公。
そこに「アップルパイが食べたいな」と思わぬリクエストが……。
過去と現在、彼女にかけられた呪いと解かれる呪いとは。
最後の幕引きまで素晴らしい、知りたいような知りたくないような。
不思議な読後感は少しだけ塩の味が強い、このアップルパイのよう。
その塩味は果たして本当に呪いだったのか——。
アナタも読めば、きっとこの物語が忘れられなくなるはず。