若くして亡くなった絹子という名の女学生。彼女の全身にはまるで蝶や花の文様のような奇妙な火傷痕がいくつも残っていた。その彼女が遺した手紙から彼女の身に何が起きたのかを追想するのが本作品だ。
本作最大の特徴は文体にあり、絹子が両親に遺した手紙がそのまま小説となっている。そこに書かれているのは、仲の良い親友二人とともにウィジャ盤遊び――日本でいうこっくりさんのようなもの――を始めたこと、そこで意外な答えが返ってきたこと、ある日突然運命的な出会いをしたこと……。20世紀前半を生きる絹子の落ち着いた文章は丁寧でとても読みやすく、好奇心、不安、歓喜、といった感じに日常の中で揺れ動く彼女の心情がよく伝わってくる。
もちろん、これだけだとただのなんてことない手紙なのだが、読者は冒頭で彼女の身に待ち受ける運命がわかっている。だからこそ、手紙の内容と現実の落差にゾッとしてしまうのだ。そして全てを読み終わった後に冒頭のエピグラフを改めて読みなおすと、まさにこの作品にぴったりのものであると納得でき、ただのホラー小説としてではなく一種の恋愛小説としても読める、奇妙な味のある一作だ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
ご縁があり、この物語に出会いました。読み終えましたので、レビューさせていただきます。
本作は物語のタイトルにもなっている綿子の現状から語られます(あまり書くとネタバレになるので、濁させていただきます)。
その後は、冒頭に至るまでの物語。それはよくある青春の一コマなのに、何処か暗い影がチラつくようなものでした。
綿子のよる敬体一人称でお話が進んでいきますが、年相応の苦悩を持つ彼女の内面にほっこりしつつも、物語の端々には不気味さを感じます。
やがて迎えるラスト。少し前からあった緩みを一気に持っていった展開。背筋に冷たいものを感じつつ、うわぁ、本当に……? と、私は思わず唸ってしまいました。
短く、読みやすく、しかし濃密にまとまっている、青春恋愛ホラー。他の皆さまも、是非読んでみてください。