きれいだよ……シャーリーン

 尾八原ジュージさんによる、お得意のホラー小説です。

 舞台はノスタルジックな薫り漂う昭和三十八年の日本。ひとりの少女を語り手として、彼女とその姉、つまり五歳年が離れた姉妹の物語が綴られてゆきます。何か冷たい手触りの感じられる世界にやがて姿を現すのは、姉妹の家に古くから祀られていた怪しの蛇神で……という、一種のまあ幻魔怪奇譚といったようなおはなしです。

 小説技法としてはいわゆる「信頼できない語り手」と呼ばれるタイプのもので、客観的事実として結局何が起きていたのか判然としない部分も多いのですが、しかしそれがかえって和風伝奇的ホラーとしての情感を否応もなく高めている……という、小説ぢからのつよい作品でした。語り手の狂気がもう本当に怖くて、そしてその語り手の言葉を通じてしか作品世界にアクセスできないというのも本当に手触りが冷たくて。

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