魔力量最強のMP回復係が勇者パーティーを追放されたが、実は最強すぎて魔法を発動させると地球がぶっ壊れる【累計30000pv•200フォロワー達成!】
第122話 シュン、パーティー再結成する。視点、シュン
第122話 シュン、パーティー再結成する。視点、シュン
「あ、バスターシュンだ!」
とある家へ向かう途中、街中で子どもがそう声を張る。
俺は周囲を見渡し、その子を見つけて手を振った。
すると、人だかりがたちどころに増えて行く手は塞がってしまった。
クロノスたちを倒した一件から、国から多大な報酬と勲章を貰った。
目撃者も多く、俺とミリアさん・カリナさんは変装なしで街中を歩くと毎回こうなる。
人気者に憧れた節はあるけど、なって見ればそれはそれで厄介事が多々ある事に気づく。
いつもはサインとか握手を時間が許す限りしているわけだが、今はできない。
「悪いけど、今日は急いでるんだ。じゃあね」
俺は人混みを割いて大通りを抜ける。
ふぅ、やっぱりフード被るか。
にしても、あの騒動から一か月経ったけど。
魔法使いの数がめっきり減ったなぁ。
クロノスの分裂体100体が街中に落下したせいで、この国のありとあらゆる武器は魔法を無効化する付与効果が当たり前となった。
そのせいで、もはや魔法が生活に使う便利な道具ぐらいの役目しかない。
冒険者じゃなきゃそれでいいのかもしれないけど、こっちはようやく強くなってきたのにレベルリセットされた気分だよ。
そういやカリブとカタリナさん、あの2人も他で冒険者になるといっていたけど元気にしているかな。
---半月前---
「シュン、俺はこの国を出る」
王宮で勲章を授かり、色々と長い儀式が終わった頃のことだ。
門を出ると、カリブとカタリナさんがいた。
俺はどうしてと言葉が口から漏れそうになるが、寸前で押し殺した。
彼がいなきゃクロノスを倒せなかった。
カエサル王はその功績を鑑みて、悪に加担した罪を帳消しにしてあげたようだ。
だけど、罪を免れたとしてもこの国に残れるほど世間は優しくないだろう。
民間人の誰かは彼が黒いフードの集団に混じっていた所を目撃したという。
貴族としても両親に勘当を言い渡された2人だ。
何がどう転ぼうと、国を出る選択肢を選んだだろうな。
「また会おうカリブ、カタリナさん! 俺、ずっと冒険者やるからさ!」
大声でそう彼らにいうと、一瞬足を止めた。
しかし、振り返ることはなく数秒後に再び歩み出す。
---現在---
と、ようやく彼女の家へ到着したようだ。
シュエリーさん、あの騒動以降ずーっと家に引きこもったまま。
名が広まるのを避けて勲章を辞退し、たんまり貰った報酬で生活している。
家は前と変わらないが、食うに困らない日常を食っているはずだ。
そんな彼女だが、楽しい毎日を送っているわけではない。
俺がここに来たのは、彼女ともう一度冒険をしたいからに他ならない。
いくら有名になり、お金があっても何もしない生活というのはどこか精神的に苦しいもんだから。
「シュエリーさん、入るよ」
「「あ、シュンお兄ちゃん」」
扉を開けて出迎えてくれたのは双子だった。
抱き着いてくるかと思ったが、流石に空気を察してか手を振って外へ出かけて行った。
奥に進むと、毛布に包まって横たわるシュエリーさんがいた。
「シュエリーさん、調子どう?」
「......」
「そうだよ......ね」
彼女がこんなに暗くなってしまったのには訳がある。
クロノスが死に際に放った魔弾は、直撃したものに呪いをかけるものだったのだ。
命を代償にした呪いはとても強力で、半神の剣ですら解呪はできなかった。
「ごめんなさい。自分がこんなになったから......だけじゃないの」
彼女は顔のしずくを腕で拭って、起き上がった。
そして、作り笑いでこちらを向いた。
彼女の顔は左の頬から額にかけて酷い火傷の跡が出来ている。
おまけに左目は視力を奪われ、黒目がない。
俺はそんな彼女がいたたまれなくなって、思わず抱きしめてしまった。
「シュエリーさん、ごめん! 俺がまた迷惑かけた!」
俺があの時、ちゃんと守れていたらこんなことには。
「何いってるのよ。私が今まで助けられたんだもん、お互い様よ」
あぁ、こっちが慰められてどうすんだよ俺。
彼女の両肩を強く掴み、真剣に見つめた。
「シュエリーさん! 俺、もう一度君とパーティー組みたい!」
そういうと彼女は微笑んだ顔を曇らせ、視線を反らした。
「無理よ。こんな焼きただれた顔して、おまけに魔法使いよ。今じゃ本当に足手まといにしかならないわ」
「それなら、一から一緒にまた強くなろうよ!」
「しつこいわね! 無理ったら無理!」
彼女は脇腹に拳を入れ、俺を突き飛ばそうとした。
衝撃で一瞬掴む力が弱まるが、何とか立て直す。
そして内心、こんな的確に脇腹ぶち込める人間が無理なわけないと言いそうになった。
だけど、こんな重い空気でしかも落ち込んでいる彼女に言ってはいけない。
色々と押し殺し、俺は再度口を開いた。
「シュエリーさん、外でなんか言われるの怖いんだろ?」
「そうよ、だから何?」
またしても一発くらいながらも、俺は続けた。
「シュエリーさん、もう他人に何言われようがどうでもいいじゃないか。
俺も君も今までだって散々言われてきただろ?」
「そうだけど......」
「俺さ、国を救った英雄ってみんなに言われるの嬉しかった。だけど、欲しかったのは名誉じゃなかったんだって気づいたんだ。
俺が欲しかったのは、シュエリーさん!」
「え? わ、私!? な、何言ってるのよ急に」
「シュエリーさん、みたいな文句言い合いながらもずっといてくれる仲間! それがずっと欲しかったんだ!」
「え? あの、告白とかじゃな」
「告白だよ! 俺はシュエリーさん、ミリアさん、カリナさん3人とパーティーを組みたい! 誰が何といおうと、俺らはずっとシュエリーさんの味方だよ」
「あんた......」
よかった、台本作ってきた甲斐があった。
シュエリーさん、感動したのか顔を俯いている。
きっと涙がこぼれそうで俺に見られたくないんだろうな。
「風のマナよ集え」
「え? ちょ、やめて!」
「ブラスト!」
俺は胸元に突き付けられた杖によって、壁に身体を激突させた。
いててと頭をさすっていると、仁王立ちする彼女がムチを持ちながら見下ろしてきた。
「な、なんでだよ! 励ましてやったのに!」
「う、うるさいわね! 勘違いさせてよくも!」
ムチを振り下ろそうと、彼女が腕を上げた直後のことだ。
「シュエリーさん、遊びに来ました!」
「ミリアさん、シュエリーさんは遊べるような状態じゃないんです。今日は顔を合わせるだけと......て、何しているんですかお2人とも」
傍から見れば、完全にSMプレイをする男女だ。
ミリアさんとカリナさんは俺と同様、彼女の心配をして家に訪れた様子。
だが、運悪く最悪なタイミングで鉢合わせた。
「「ミ、ミリアさん! カリナさん(カリナ)! こ、これはただ別にそういうあれじゃないからね!」」
俺とシュエリーさんはお互いに頬を染めつつ、ほぼ変わらぬセリフを2人へ放った。
「へーそうなんですねぇ。でもまぁ、元気になったみたいでよかったですぅ」
ミリアさんはあまりの驚きに、とてつもない棒読みをした。
「シュンさん! あなたって人は!」
カリナさんは俺に詰め寄るや否や、たいそう鋭い目つきで睨んできた。
殺される、そう直感した。
しかしそれは、すぐに勘違いだとわかった。
彼女はすぐにシュエリーさんに駆け寄り、鼻息を荒くした。
「ず、ずるいですシュエリーさん。わ、私もお願いします!」
「え? 何言ってるのカリナ」
「あわわ。もしかして私がおかしいのかな? わ、私も仲間に入ったほうがいいのかな」
ミリアさんはパニックに陥ったのか、顔を真っ赤にしてブツブツと何か喋り出した。
「シュン、あなたどうにかしてよもう!」
シュエリーさんはわちゃわちゃする状況に混乱しまくり、俺に助けを求めた。
すぐに手を差し伸べようと考えるも、悪だくみがふと浮かぶ。
そうだ、これなら彼女をその気にさせられるぞ。
「シュエリーさん、そんなに助けてほしい?」
「馬鹿! 早くしてよ!」
「じゃあこれにサインして?」
俺は彼女にある紙を渡した。
「え? この状況を助ける代わりにパーティーを組むこと? 冗談じゃないわよ!」
「あっそ、ならいいんだけど」
彼女は頭をわしゃわしゃとし、こちらをとてつもなく睨んできた。
それでもめげない俺を見て、はぁとため息をつきサインする。
「シュエリーさん、屋根の修理代じゃないけどさ。1000万ジェニー、一緒に稼ごうね!」
「うるさい馬鹿!」
こうしてパーティーを追放された俺の冒険は、騒がしく再開するのであった。
魔力量最強のMP回復係が勇者パーティーを追放されたが、実は最強すぎて魔法を発動させると地球がぶっ壊れる【累計30000pv•200フォロワー達成!】 たかひろ @niitodayo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます