予言の成就を阻止せんとする一族と運命に翻弄される〝滅亡の母〟



昨今流行りの転生や悪役令嬢、チートものには食指が動かず、別のなにかドキドキしそうなものを読みたいなあと探していて見つけた作品です。


導入はゆるやかに世界観が描かれます。初めの事件が起こった後もしばらくは混乱する主人公に寄り添うように場面は徐々に変わります。好みは分かれるかもしれませんが、自分は彼女らの状況をしっかり把握できたので特に冗長だとは思いませんでした。

カテゴリとしては現代恋愛ファンタジーですが、物語は濃厚な恋模様を追うのではなく、登場人物それぞれの心情や思惑が丹念に綴られ半ば群像劇のように展開してゆきます。丁寧かつ読みやすいのでひとりひとりに感情移入もしやすかったです。

作中にヴィランはいません。とはいえ、それぞれが何かを救うため、守るため、自分の使命のために苦しみながら戦い、殺意を向け合います。

切なさや愛しさや絶望のカタルシスを感じられる物語です。