本当はきっとどこまでも自由なはずの空

 かつて教官を務めていた戦闘機乗りの女性と、彼女に師事した少女の、避け得ない運命と因縁の物語。

 どシリアスな空戦もののファンタジーです。
 作中の世界そのものは明らかに現実のそれとは異なるのですけれど、科学技術等の設定面はほぼ現実の世界と同等であるところが独特なお話。近代的なジェット戦闘機を駆り、国家のために任務を遂行する主人公、という点では、事実上の現代ものと言ってもいいかもしれません。

 自由についての物語であり、主人公個人の苦悩や葛藤が主軸にあるのですけれど、それがそのまま家や国などのより大きな括りに繋がっている感じが好きです。
 壮大な国家規模のドラマでもあり、主人公の生き様の物語でもあって、しかしそれらが分かち難く結びついているというか、そのように描き出されているところ。

 個としての自分と公の存在としての自分、そして自由というものについて。かなり広く大きく、それも複雑に言及されているにもかかわらず、一本の物語として飲み込めてしまうところがとても魅力的でした。

 終盤の山場、ドッグファイトのシーンはもう圧巻です。
 一般的な生活からは縁遠い、つまりは描くのも想像するのも難しいはずのアクションを、でもビリビリに身に迫る迫力を持って描き出すこの筆致!
 無常さの中にロマンのようなものを感じる、シリアスな戦争ものの作品でした。

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