素晴らしい地獄のピタゴラスイッチを読み終えて、溜め息と共に湧き上がるモノを言葉にすれば「驚異の怪作」としか言いようのない読者驚嘆の作品でした。
序盤の主人公すら描かれた文字数こそ多いものの終焉へのトリガーでしかないと言う構成にこの作品の真の主題は地球人類である事はいちいち書くことでもなく明白ですが、その主題が滅びそうで滅びず生き足掻き最悪の中の狂った最善を尽くした末があの虚無的なオチとは、読んだ読者もシニカルに笑うか唖然茫然とするしかないでしょう。
しかし名作・火の鳥にすら匹敵する壮大な一大ページェントを1万文字に凝縮して織り上げたその筆力には感嘆と称賛しかありません、ささやか先生 素晴らしい作品をありがとうございます。
加藤啓司は突如出現した神によって、特殊な異能が得られるガチャを引かされる。そこで何と彼はSSRの上を行く最上級UR(ウルトラレア)の異能を手に入れる。その名も【粒あんエクスチェンジ】! その効果はどんなまんじゅうでもその中身を粒あんに変えられるというものだった……! いらねえな、これ。
だが腐ってもUR、この粒あんにはある秘密があった。めちゃくちゃ美味いのである……! いや、それでも微妙だな、他には【テレポーテーション】や【影分身】とか当たり能力が候補にあったし……。こんなハズレ能力でも使いようはあるということで加藤はこの力を駆使し、美味しいまんじゅうを大量生産して商売を始めるのだが、ある事件をきっかけにこの能力のとんでもない活用法に気付いてしまう……!
微妙な能力を意外な手段で活用して大活躍!というのはわりと王道のパターンである。しかし、本作は短編ということもあって加藤が能力の使い方に目覚めてからのスピード感が半端ない。あれよあれよと話は予想外の展開に転がっていき、気が付けばとんでもないスケールの話へと変貌しているのだ。本作のジャンルはSFになっており、序盤だけ読むと現代ファンタジーの方がふさわしいのでは?という気もするのだが、最後まで読むとちゃんとSFになっているし、やたら規模が大きくなったのにラストではややブラック気味でありながら、これしかないという結末に綺麗に落としているのだから非常に完成度の高い一作だ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
ある日突然神様から授かった能力、まんじゅうの中身を粒あんに変える「粒あんエクスチェンジ」により、世界に変革をもたらす男の物語。
えっちょっと何これ面白い……! いや「えっちょっと何これ」なんて言ったら失礼なようですが、でも読んでいる時に感じるこの「えっちょっと何これ」感こそが最大の魅力なんですから仕方がありません。変拍子のような、何か強烈なドライブ感。
ものすごい作品でした。何をどうやったらこんなお話を書けるの?
ある種のサクセスストーリーであり、またそこに孕んだ一抹の危うさが魅力だったり、というお話には違いないのですけれど、でも読んでいてすぐ「そんなものじゃない」となるところがもう本当に大好き!
事態の変遷というか、雪だるま式に話が大きくなってゆくこの感じ。しかしものが「粒あんエクスチェンジ」だけに、果たして一体どこにどう進んでいくやら、まるで予想もつかないのが最高でした。もう先が気になってもりもり読まされちゃう。
淡々と、明瞭に状況を綴るような書き方の中で、個々のキャラクターに妙な魅力があったりするのも個人的に好きです。なぜか越後屋さんがとても好き……。
一見馬鹿げているようでいて、いや馬鹿げている部分は間違いなくあるのですけれど、でもそれすら全部飲み込んでしまうような壮大な作品でした。面白かった〜!
第四回こむら川小説大賞、テーマは「異能」。十人十色の異能がシノギを削る中で明らかに異彩を放つ、そして「役にたつのそれ?」とい首をかしげるトンデモ能力が主題のお話。だが、読み進めていけばその力はいかなるチート、いかなる技能すらおいてけぼりにするとてつもないポテンシャルを持っていたことに驚愕することになる。
そもそも、饅頭とは何だろうか、というトンチと共にスケールが指数関数的に肥大化していく展開はただただ脱帽するばかりで、そこで明かされる驚愕のまんじゅう真実にただ読者は最後の一行まで翻弄されるのみである。読み終えたとき貴方は万物にまんじゅうの特性を見ることが出来るようになるでしょう。
……そうとしか言えねーよ。主人公の想像力凄すぎ!そうか!あれもまんじゅう、これもまんじゅう……。
最後まで餡たっぷりの狂気(誉め言葉)はお時間がある方は一度ご賞味あれ。長い夜のお供のおやつのカロリーの丁度良い消費先になる筈です。
(これを書き終わったらいちご大福を買いにいこうとおもいます。)