その異能は世界をも動かす
- ★★★ Excellent!!!
加藤啓司は突如出現した神によって、特殊な異能が得られるガチャを引かされる。そこで何と彼はSSRの上を行く最上級UR(ウルトラレア)の異能を手に入れる。その名も【粒あんエクスチェンジ】! その効果はどんなまんじゅうでもその中身を粒あんに変えられるというものだった……! いらねえな、これ。
だが腐ってもUR、この粒あんにはある秘密があった。めちゃくちゃ美味いのである……! いや、それでも微妙だな、他には【テレポーテーション】や【影分身】とか当たり能力が候補にあったし……。こんなハズレ能力でも使いようはあるということで加藤はこの力を駆使し、美味しいまんじゅうを大量生産して商売を始めるのだが、ある事件をきっかけにこの能力のとんでもない活用法に気付いてしまう……!
微妙な能力を意外な手段で活用して大活躍!というのはわりと王道のパターンである。しかし、本作は短編ということもあって加藤が能力の使い方に目覚めてからのスピード感が半端ない。あれよあれよと話は予想外の展開に転がっていき、気が付けばとんでもないスケールの話へと変貌しているのだ。本作のジャンルはSFになっており、序盤だけ読むと現代ファンタジーの方がふさわしいのでは?という気もするのだが、最後まで読むとちゃんとSFになっているし、やたら規模が大きくなったのにラストではややブラック気味でありながら、これしかないという結末に綺麗に落としているのだから非常に完成度の高い一作だ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)