「知ろうとする」ということ

注:これはポエムです。読まれないことをお勧めします。

 理解も共感もされなかった筆者の、魂の叫びともいうべき一冊。
その一文一文を反芻しながらしかし、私が抱いたのは強烈な不快感でした。
いえ、違うんです。決してこの作品が不快という意味ではなく。
「A」というタイプの人間がいるのか——知らなかったな。
ええ、「知らなかった」自分に無性に腹が立った。
もちろん、作品に数多登場する登場人物にも嫌悪感を抱きました。
しかし、読み進めれば進めるほど、それら「イヤな」登場人物が自分と重なってしまう。
主人公(筆者)にとって、彼らの中には「理解できない」「怪物」のように感じられる人もいたかもしれない。
しかし、他でもない自分自身が、その内側に「怪物」を宿しているのではないか。

私は本作を読みつつ、その「怪物」の正体は「無理解」だと思いました。
曰く、「最大の罪は無関心です」(マザー・テレサ)。
人はみな違う生き物であり、一つとして同じ「個体」は存在しない。
人は基本、分かり合えない生き物なのだと思います。
でも、だからこそ分かり合おうとする。そして、「そんなものか、世界」と受け入れようとする。できないなりに、やってみようとする。
その姿勢を、人は真に「愛」と呼ぶのではないでしょうか。
ええ、違うんでしょうね。これはただの読者の妄想です。

しかし、読む人にそんなことを考えさせてしまう”魔力”を、この作品は秘めている。それだけは申し上げておきましょう。

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