捉えどころが面白くて、共感ができるエッセイです。

 とても面白いエッセイですが、できればじっくりとゆっくりと読みたい内容です。でも、面白いのでついつい次の話を読んでしまうのですが(笑)

 『これ、よければもらってください』のいいところは、「捉えどころが面白くて、共感できるところ」につきます。思わず「あー! 分かる、分かる!」と画面を見ながら頷いてしまう。
 どの話も面白くて、どれがおススメかと選出するほうが難しいのですが、第7話の「異世界転生の思い出」は、今、カクヨムさんで活動されている多くの方に共感してもらえる内容かと思うので、ご紹介いたします。


 第7話「異世界転生の思い出」では、作者さん自身の「異世界転生」を書いていたころの話と、何故今、これらのジャンルの物語が受け入れられ、流行っているのかということが書かれています。
 「異世界転生」が現在受け入れられている見解については、私も同意見だったのですが、物語というのはやはり社会を映し出しているのかなと思います。

 人気になる作品というのは、もちろんその作品自体に力があって、人を惹きつけるものがあるとは思いますが、時代によってはその内容が受け入れられないことがあります。
 実際過去の文豪でも、亡くなった後に評価されるということが現実に起きています(もちろん、他にも要因はあると思います)。人々が物語を選ぶ背景には、今私たちが生きている時代そのものが、少なからず影響されているんだろうなと私は思います。
 それはきっと、物語というのは単純に空想や架空のものではなく、実際に生きる人たちの言葉を代わりに表現しているからではないでしょうか。
 言いたくても言えないこと、言ってはいけないこと。それを物語が代弁してくれている。例えば、「異世界転生が好き」というのは、作者の藤光さんも書いていらしていましたが、「現実の世界に魅力を感じていない」ということなのかもしれません。 

 このように『これ、よければもらってください』では、自分のどこかににあった「考えていたこと」「思っていたこと」を文章にしてくれているので、気持ちを言葉に置き換えられる感覚があります。それは案外人にとって重要なことではないでしょうか。
 共感できる方も、共感できない方もいると思います。でも、良かったら読んでみてほしいです。柔らかな文体で書かれていらっしゃるので、はじめての方がよまれても疎外感がなく、すっと語られている中に入り込んで読んでいくことができます。

 『これ、よければもらってください』、気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。