【KAC20226】年明け早々焼き鳥?

「あれ? 佐藤くん、何読んでるの?」


 冬も近くなったある日、とある遊戯ゲームの教本を読んでいると、吉川が話しかけてきた。


「麻雀するんだ?」

「やったことないんだけどね。今回は必要に駆られて」

「どうしたの?」

「年明けの親戚の集まりで、麻雀のメンツに僕も入れられるらしいんだ」

「なるほどね」


 吉川が納得顔で頷いた。


「難しそう?」

「覚えることは結構多いかな。役とか点数計算とか」

「役? 点数計算?」


 どうやら吉川は全く知らないらしい。

 簡単に説明することにした。


「役は上がるために必要な形のこと。点数計算は上がり役や待ち方で点数と得点が変わるから、その計算方法のことかな」

「なんだか難しいんだね」

「まぁね。僕も勉強しつつ、何度かネット対戦してやっと掴めてきたところだし」

「うへぇ。私にはちょっと無理そうだなぁ」


 吉川が眉根を寄せて不満を言った。


「まぁそれなりに面白いよ。ただ、ローカルルールが面倒そうだけど」

「そうなの?」

「ああ。その場の取り決めで、この上がり方はOKだけどこの上がり方はNGとか色々あるらしいんだ」

「ますます面倒そう……」

「とはいえ、ローカル役も有名どころばかりみたいだから、言うほど大変ではないみたいだよ。これには載ってないから僕も全然知らないんだけどね」


 手にした教本をぽん、ぽん、と軽く叩いてみせる。

 そこで一つ思い出した。


「ローカルルールと言えば、一つ変なのを言われたな」

「どんな?」

「一回も上がれなかったらその日の夕飯は『焼き鳥』になるらしいんだ」

「なんで焼き鳥?」

「さあ。従兄が『一回も上がれなかったら焼き鳥だからな! 覚悟しとけよ!』って」

「佐藤くん、焼き鳥苦手だったっけ?」

「そんなことないよ。むしろどちらかといえば好きかな」

「じゃあなんでだろうね?」

「さあ……」


 年明けの正月。

 宣言通りしっかりとフラグを回収した従兄が悶える様を疑問に思って問い質したとき、僕は初めて『焼き鳥』の意味を知ったのだった。

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【休載中】ふたりきりの図書室 金石みずき @mizuki_kanaiwa

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