第6話 幽霊の居場所

 霊界アベンジャーズの霊力を凌駕し彼らを蹴散らした無数の腕は、恐怖で凍りつくテレビの撮影隊へ襲いかかる。


「あぁぁ!? 手が、手がぁぁああ!!」

 

 彼らにも芝のような手が見えたのか、悲鳴を上げながら身体を掴もうとする手を、取り払う。

 手はスタッフ達の足や腰、腕肩へまとわりついて地面へ引きずりこもうとした。


「撤収‼ ダメだ! 収録できねぇ~。死にたくねぇ‼」


 司会者が号令をかけて撮影隊の中でも一番先に走り去る。

 暴れるスタッフ達がどうにか手を振り払うと皆、地面を転がり泥だらけで立ち上がって逃げた。

 パニックになりながらも、高価なテレビ機材をしっかり持ち帰るところはプロ意識を感じた。


 騒がしい生者が立ち去ると芝のように生えた無数の腕が消え去り、不気味な怪現象は静まった。


 廃屋の裏から出て村の中心へ進むと、私を取り囲む霊魂が現れた。

 蛍の光のように漂う霊魂。

 暖炉の温かい火のように温度を感じる光明。


 そうか、アナタ達は戦国時代に惨殺された村の人々なのね?

 助けてくれて、ありがとう。


 霊魂は1つ、また1つと消えていき廃墟村の静かな闇が戻った。


 そうだったんだ。

 居心地が良かったのは私一人じゃなかったからだ。

 こんなにも、同じように死んだ後の余生を過ごしてた霊がいたんだ。


 今まで以上に穏やかな気持ちになれる。

 1人じゃない安心できる場所。

 ここが私のやっと見つけた居場所だ。


 それからの私は懲りずにやってくる肝試し目的のパリピや心霊スポット動画配信者を、廃墟村に住まう地縛霊達と協力して脅かして追払い。

 度々やってくる霊力アベンジャーズと全面戦争をして、彼らの除霊する霊力と自信を打ち砕いていった。


 そんなこんなで死んだ後の余生を、おもしろおかしく過ごしていったとさ。


 めでたし、めでたし……。

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幽霊ちゃんの隠れんぼ にのい・しち @ninoi7

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